SIMHのPDP-11エミュレーション環境でのUnix v7

1978年にUNIX V7(Seventh Edition)がリリースされました。
※その後、UNIX V8も開発されましたが一般ユーザにはリリースされませんでした。
このUNIX V7はDEC社のPDP-11(16bit)で実行できます。

1978年にワープしてPDP-11上のUNIX V7を使ってみたいという人も多数いるかと思います。
そのような状況が考慮されてか「UNIX USER」という雑誌で「UNIX考古学」という連載が始まりました。
その連載の第8回目にあたる2003年12月号でのテーマは「Seventh Editionでの環境構築」でした。
この「Seventh Editionでの環境構築」ではSIMHのPDP-11エミュレーション環境でのSeventh Edition導入手順詳細が記載されています。
またその2003年12月号にはSeventh Editionの通信機能を有効にする環境構築に必要なファイル含めてOS一式が付属しています。
※上記雑誌がなくてもそれと同様の操作手順を紹介したWebサイトが多くあるためSeventh Edition環境構築は容易にできます。

ここではSIMHのPDP-11エミュレーション環境でのSeventh EditionをQEMU on Windowsで簡単に実行する方法含めて紹介します。
尚、「UNIX USER」(2003年12月号)記載の詳細説明はここでは記載していません。


1.SIMHのPDP-11エミュレーション環境でのSeventh Edition仮想ディスクの作成

(1)元になる仮想ディスクは「UNIX USER」(2003年12月号)付属のRP0.DSKファイルです(RP06ディスクドライブ用)。
(2)SIMHのPDP-11エミュレーション環境はi386のUbuntu 8.04上に用意しました(PowerPC版のUbuntuでも構いません)。
Ubuntu 8.04では下記のコマンドでSIMHをインストールできます。
# apt-get install simh
(このsimhパッケージにpdp11というエミュレータが含まれています)
(3)「UNIX USER」(2003年12月号)付属のRP0.DSKに以下を実行したものをUnix7th.diskという仮想ディスクファイルとして保存しました。
※カーネル再構築にはソースコードを使用します。
・コンソール以外の端末(VT100相当)から接続利用するためのターミナルマルチプレクサ用ドライバ(dzドライバ)の追加とカーネル再構築(/unixカーネルサイズ:約50KB)。
・dzドライバ用スペシャルファイルの作成(/dev/tty00〜/dev/tty07)。
・コンソール以外の端末からのtelnet接続を許可するための/etc/ttysの設定変更。


2.Ubuntu 8.04上でのSeventh Edition仮想ディスク利用


3.QEMU on WindowsでのSeventh Edition利用


4.YDL 6.1のQEMUでのSeventh Edition利用

YDL(Yellow Dog Linux) 6.1のQEMU環境でもSeventh Editionを利用できます。


5.YDL 6.1上のWindows 3.1とSeventh Editionの接続(OS三重奏)

YDL 6.1にSIMHを導入してSeventh Editionを起動し、QEMU上のWindows 3.1からSeventh Editionに接続してみました。
以下に、PowerPC上でのYDL 6.1 + Seventh Edition(PDP-11エミュレータ) + Windows 3.1(QEMU)の同時実行例を紹介します。
これはOS三重奏(プラットフォーム三重奏)の代表例と言えます。


6.YDL 6.1上のUbuntu 8.10 Serverを介したWindows 3.1とSeventh Editionの接続

7.PowerPC版Ubuntu 8.04上のWindows 3.1とSeventh Editionの接続(OS三重奏)

YDL 6.1で実行したOS三重奏はPowerPC版Ubuntu 8.04でも実現できます。
但し、PowerPC版Ubuntu 8.04のXorgパッケージには不具合がありMacマシンで期待通りに動作しないことがあります。
(このためOS三重奏はYDL 6.1での実行がお奨めです)

YDL 6.1の場合と同様、PowerPC版UbuntuにSIMHを導入してSeventh Editionを起動し、QEMU上のWindows 3.1からSeventh Editionに接続します。
以下に、PowerPC上でのUbuntu 8.04 + Seventh Edition(PDP-11エミュレータ) + Windows 3.1(QEMU)の同時実行例を紹介します。


8.Windows XPでのSeventh Edition利用

PDP-11エミュレータを含むSIMHとしてはWindows版バイナリも公開されています。


9.補足

(1)Seventh Editionの持ち運びの環境
QEMU on Windowsはインストールが不要で、かつユーザモードネットワークでリダイレクト機能が使用できます。
USBメモリにQEMU on Windows, SIMHとSeventh Editionを含んだUbuntu 8.10 Server仮想ディスクを格納しておくと
いつでもどこでもそのSeventh Editionが利用可能となります。

(2)Seventh Editionの/binに存在するコマンド一覧(/etc直下にもコマンドはあります:dmesg等)
※Seventh Edition付属のコマンドは豊富ですが各コマンドで指定できるオプションは現在のLinux用コマンドよりは少ないです。

(3)Seventh Editionには/etc/mtabはありますが/etc/fstabは存在しません。

(4)Seventh Editionの機能構成は初期のLinuxに比べてもかなりシンプルなものですが当時のOSとしてはよくまとまっています。

(5)Macマシンの「PowerPCからIntel系Macへのシフト」が進む中でYDLは貴重な存在です。
※YDLのEnlightenmentデスクトップは極めて動作が軽くGUI操作も滑らかです。
また一台のマシンでPowerPC, i386, PDP-11用OS群を同時実行するのに適したマシンはPowerPCであり、そのOSはYDLです。
YDLではQEMU, SIMHが軽快に動作し、上記で紹介したOS三重奏(プラットフォーム三重奏)はまさにYDLならではの利用と言えます。



(6)16bitのPDP-11は32bitのVAX-11に置き換わり、VAX-11用OSであるVMSに対応したOracleがその後誕生しました。