オープンギャラリー：QEMUゲスト間ネットワーク接続環境

QEMUゲスト間ネットワーク接続環境

QEMU 0.9.0になってQEMUゲスト同士での本格的相互ネットワーク接続ができるようになりました。
※QEMU 0.8.xでは一部制限あり。
このQEMUゲスト間ネットワークはユーザモードネットワークとTAP型ネットワークでそれぞれ利用できます。
但し、どのOSでもこのQEMUゲスト間ネットワークが利用できるかどうかは不明ですがLinux同士では実現できています。
ここではユーザモードネットワークとTAP型ネットワークのそれぞれについて説明します。

尚、今回使用したQEMUはQEMU on Windows 0.9.0版です。
Ubuntu 8.04付属QEMUでのTAP利用につても触れています。

１．マシン環境

「QEMU on Windows」を動作させるホストマシン環境は以下の通りです。

CPU：Core 2 Duo E6600
メモリ：3GB
LANカード：Intel PRO/100 S
ホストOS：Windows XP SP2

２．ユーザモードネットワークでのゲスト間接続

仮想マシン1と仮想マシン2のOS
・仮想マシン1：Ubuntu 8.10 Serverとします。
・仮想マシン2：これもUbuntu 8.10 Serverとします。
仮想マシン1の起動
(1)仮想マシン1の起動コマンド

qemu.exe -L . -m 128 -hda qemupc1.img -net nic -net socket,listen=localhost:1234

※最後の「1234」はポート番号です。
(2)QEMUでは最初に起動した仮想マシンのMACアドレスは52:54:00:12:34:56となります。
(3)上記コマンドで仮想マシン1を起動します。
(4)仮想マシン1がDHCP利用の場合は起動後以下のコマンドでネットワークが利用できます。
# ifconfig eth0 10.0.2.16
(5)仮想マシン1がDHCPを利用しない場合は以下の設定にします。
・/etc/network/interfaces
auto eth0 iface eth0 inet static address 10.0.2.16 network 10.0.2.0 netmask 255.255.255.0 broadcast 10.0.2.255 gateway 10.0.2.2
・/etc/resolv.conf
nameserver 10.0.2.3
この場合は仮想マシン1を再起動するかネットワークサービスを再起動します。
仮想マシン2の起動
(1)仮想マシン2の起動コマンド

qemu.exe -L . -m 128 -hda qemupc2.img -net nic,macaddr=52:54:00:12:34:57 -net socket,connect=localhost:1234

(2)仮想マシン2のMACアドレスは52:54:00:12:34:57を割り当てます。
(3)上記コマンドで仮想マシン2を起動します。
(4)仮想マシン2がDHCP利用の場合は起動後以下のコマンドでネットワークが利用できます。
# ifconfig eth0 10.0.2.17
(5)仮想マシン1がDHCPを利用しない場合は以下の設定にします。
・/etc/network/interfaces
auto eth0 iface eth0 inet static address 10.0.2.17 network 10.0.2.0 netmask 255.255.255.0 broadcast 10.0.2.255 gateway 10.0.2.2
・/etc/resolv.conf
nameserver 10.0.2.3
この場合は仮想マシン1を再起動するかネットワークサービスを再起動します。
仮想マシン同士のネットワーク接続
仮想マシン同士で相互にping, ssh接続, ftp接続等が利用できます。
ユーザモードネットワークのためホスト側から仮想マシンに接続することはできません。
但し、QEMUのリダイレクト設定機能を使用すればユーザモードネットワークでもホスト側から仮想マシンへのtelnet等が利用できます。

３．TAP型ネットワークでのゲスト間接続

QEMU on WindowsでTAP型ネットワークを利用するためにはOpenVPNを導入します。

ホスト側へのOpenVPNの導入と設定
- OpenVPNのインストール
  OpenVPNではTAP-Win32 Virtual Ethernet Adapter(TAP-Win32 Adapter V8)もインストールされます。
- OpenVPNに含まれるTAP-Win32 Adapterの設定
  TAP-Win32 Adapter用のローカルエリア接続のTCP/IPを次のように設定します。
  (尚、この接続名はここでは「TAP-Win32-LAN」としておきます)
  IPアドレス：192.168.0.1
  サブネットマスク：255.255.255.0
  デフォルトゲートウェイ：無し
  優先DNSサーバー：これは環境依存
- ホストOSのネットワークに対する「インターネット接続の共有」設定
  ホストOSの実際のネットワークカードに対するローカルエリア接続定義のプロパティで
  「ネットワークのほかのユーザーに、このコンピュータのインターネット接続をとおしての接続を許可する」にチェックを入れます。
  更に、ホームネットワーク接続のプルダウンメニューからTAP-Win32 Adapter用のローカルエリア接続定義名(TAP-Win32-LAN)を選択しておきます。
仮想マシン1と仮想マシン2のOS
・仮想マシン1：Vine Linux 4.0とします(ネットワークはDHCP利用とします)。
・仮想マシン2：KNOPPIX 5.1.1とします(ネットワークはDHCP利用とします)。
仮想マシン1の起動
(1)仮想マシン1の起動コマンド
※仮想マシン1の起動コマンドでTAP接続名を指定します(仮想マシン2の起動ではTAP接続名は指定しません)。

qemu.exe -L . -m 128 -hda pc1vine40.img -net nic -net tap,ifname=TAP-Win32-LAN -net socket,listen=localhost:1234

(2)QEMUでは最初に起動した仮想マシンのMACアドレスは52:54:00:12:34:56となります。
(3)上記コマンドで仮想マシン1を起動します。
(4)仮想マシン1はDHCP利用にしており以下のネットワーク設定が自動的に行われます。
・IPアドレス：192.168.0.67 ※67の部分は固定的ではありません。
・デフォルトゲートウェイ：192.168.0.1
・/etc/resolv.confの内容;
nameserver 192.168.0.1
(5)/etc/resolv.confに以下の行を追加します。
nameserver ホスト側で利用しているルータアドレス ※インタネット接続用です。
仮想マシン2の起動
(1)仮想マシン2の起動コマンド(DドライブのブータブルDVDからの起動)
qemu.exe -L . -m 128 -boot d -cdrom \\.\D: -hda pc2dummy.img -net nic,macaddr=52:54:00:12:34:57 -net socket,connect=localhost:1234
(2)仮想マシン2のMACアドレスは52:54:00:12:34:57を割り当てます。
(3)上記コマンドで仮想マシン2を起動します。
(4)仮想マシン2にはDHCPによるIPアドレスの自動割り当ては行われないため以下のコマンドでネットワークを利用可能にします。
# ifconfig eth0 192.168.0.40 ※40部分は任意です。
# route add default gw 192.168.0.1 eth0
(5)/etc/resolv.confに以下の行を追加します。
nameserver ホスト側で利用しているルータアドレス ※インタネット接続用です。
仮想マシン同士のネットワーク接続
仮想マシン同士で相互にping, ssh接続, ftp接続等が利用できます。
TAP型ネットワークのためホスト側と仮想マシン側の相互接続も可能です。
下記は仮想マシンからインターネットへのping確認と仮想マシン同士でのping確認をしている様子です。

４．Ubuntu 8.04付属QEMUでのTAP型ネットワーク利用のゲスト間接続

Ubuntu 8.04にはQEMU 0.9.xが付属しています(apt-get install qemuで導入可能)。
Ubuntu 8.04にXen関連パッケージを導入している場合TAP型ネットワークの利用は非常に簡単です。

事前確認
(1)Ubuntu 8.04にXen関連パッケージが導入されていること(「Xen 3.2(Ubuntu 8.04デスクトップ編)」参照)。
最小限のパッケージ導入で済ませたい場合は以下のコマンド実行だけでもOKです。
# apt-get install libvirt-bin ※依存関係にあるbridge-utilsも自動インストールされます。
尚、libvirt-binパッケージはvnet0を生成する/etc/init.d/libvirt-binや/usr/sbin/libvirtdを含みます。
(2)通常カーネルで起動した状態でのifconfigでvnet0が表示されること。
(3)/usr/sbin/brctlが存在すること。
QEMUの導入
以下のコマンドでQEMUを導入します。
# apt-get install qemu
仮想マシン1と仮想マシン2のOS
Ubuntu 8.04の通常カーネル上で下記のQEMU仮想マシンを動作させます。
・仮想マシン1：Ubuntu 8.10 Serverとします(ネットワークはDHCP利用)。
・仮想マシン2：これもUbuntu 8.10 Serverとします(ネットワークはDHCP利用)。
TAPインタフェース作成スクリプトの作成
Ubuntu 8.04のqemuパッケージには以下の内容をもつ/etc/qemu-ifupが含まれています。

#!/bin/sh
sudo -p "Password for $0:" /sbin/ifconfig $1 172.20.0.1

この/etc/qemu-ifupを使用した場合はDHCP利用でもIP割り当てはされません。
そこで以下の内容をもつ/etc/myqemu-ifupを新規に用意します。
# vi /etc/myqemu-ifup

#!/bin/sh
/sbin/ifconfig $1 0.0.0.0 promisc up
/usr/sbin/brctl addif vnet0 $1

# chmod 755 /etc/myqemu-ifup
仮想マシン1の起動
(1)仮想マシン1の起動コマンド
※仮想マシン1の起動コマンドでTAPインタフェース作成スクリプトを指定します(仮想マシン2の起動ではそれを指定しません)。

qemu -no-kqemu -m 128 -hda pc1jeos810.img \
-net nic -net tap,ifname=tap0,script=/etc/myqemu-ifup \
-net socket,listen=localhost:1234

(2)QEMUでは最初に起動した仮想マシンのMACアドレスは52:54:00:12:34:56となります。
(3)上記コマンドで仮想マシン1を起動します。
(4)仮想マシン1はDHCP利用にしており以下のネットワーク設定が自動的に行われます。
・IPアドレス：192.168.122.140 ※140の部分は固定的ではありません。
※この192.168.122の部分は/etc/libvirt/qemu/networks/default.xmlに定義されている値です。
※尚、この自動割り当てされたIPアドレスは/var/lib/libvirt/dhcp-default.leasesの内容からも確認できます。
・デフォルトゲートウェイ：192.168.122.1
・/etc/resolv.confの内容;
nameserver 192.168.122.1
仮想マシン2の起動
(1)仮想マシン2の起動コマンド

qemu -no-kqemu -m 128 -hda pc2jeos810.img \
-net nic,macaddr=52:54:00:12:34:57 \
-net socket,connect=localhost:1234

(2)仮想マシン2のMACアドレスは52:54:00:12:34:57を割り当てます。
(3)上記コマンドで仮想マシン2を起動します。
(4)仮想マシン2もDHCP利用にしており以下のネットワーク設定が自動的に行われます。
・IPアドレス：192.168.122.153 ※153の部分は固定的ではありません。
・デフォルトゲートウェイ：192.168.122.1
・/etc/resolv.confの内容;
nameserver 192.168.122.1
仮想マシン同士のネットワーク接続
仮想マシン同士で相互にping, ssh接続, ftp接続等が利用できます。
TAP型ネットワークのためホスト側と仮想マシン側の相互接続も可能です。
下記は仮想マシンからインターネットへのping確認と仮想マシン同士でのping確認をしている様子です。
仮想マシン3(BackTrack 3)の追加
このTAP型ネットワーク環境にBackTrack 3(2008年6月リリース版)を追加してみました。
※BackTrackはSlackware/Slaxベースのセキュリティ監査用ライブLinuxディストリビューションです。
(1)仮想マシン3の起動コマンド(今回はライブCD起動)

qemu -no-kqemu -m 128 -boot d -cdrom /dev/cdrom -hda qemudummy.img \
-net nic,macaddr=52:54:00:12:34:58 \
-net socket,connect=localhost:1234

(2)仮想マシン3のMACアドレスは52:54:00:12:34:58を割り当てます。
(3)上記コマンドで仮想マシン3を起動します。
(4)仮想マシン3もDHCP利用にしており以下のネットワーク設定が自動的に行われます。
・IPアドレス：192.168.122.166 ※166の部分は固定的ではありません。
・デフォルトゲートウェイ：192.168.122.1
・/etc/resolv.confの内容;
nameserver 192.168.122.1

(5)仮想マシン3(BackTrack 3)から仮想マシン1と仮想マシン2にpingを打って接続確認してみました。
※BackTrack 3の龍という文字はスタイリッシュですね(単純ロゴ例)。
おまけ：QEMUゲストでのテキストブラウザ利用
QEMUゲストに組み込み済みのjfbtermとw3mを使用してWebページを表示してみました(上から2番目のウインドウ)。