Xen 3.0.4(Xen on VMware編)

Xen本体はマシン環境に大きく依存しますが、Xenの管理/支援ツールは実機で使用する前に仮想マシン環境で事前に試しておきたいというニーズもあります。
ここではSLES 10 SP1(SUSE Linux Enterprise Server 10 SP1)に付属のXen 3.0.4対応仮想マシン管理機能をVMware環境上で実行する手順を紹介します。

今回使用したPCのハードウェア/ソフトウェア構成は以下の通りです。
・CPU：Core 2 Quad Q6600
・チップセット：Intel P35
・メモリ：8GB
・VGAカード：nVIDIA GeForce 8800GT(VRAM 512MB)
・HDD：S-ATA 250GB(但し、仮想ディスクファイルは1TBのS-ATA HDDに格納)
・LANカード：Intel PRO/100 S Desktop Adapter
・ホストOS：Windows Vista Ultimate(32ビット版)
・VMware：VMware Server 1.0.3
・VMware上のOS：SLES 10 SP1
・VMware上のSLES 10 SP1のDomainUで動作させるOS：SLED 10 SP1(SUSE Linux Enterprise Desktop 10 SP1)


１．ホストマシン(Windows Vista)へのVMware Serverの導入

ホストマシン(Windows Vista)へのVMware Serverの導入手順はここでは省略します。


２．VMware環境へのSLES 10 SP1のインストール

• 仮想マシン定義
  VMwareの「New Virtual Machine Wizard」を使用してSLES 10 SP1用の仮想マシン環境を定義します。
  今回は以下の仮想マシン定義としました。
  (1)Guest Operating System：Linux
  (2)Guest OSのVersion：SUSE Linux Enterprise Server
  (3)仮想マシン名：SLES10SP1
  (5)CPU数：1
  (6)メモリ：2048MB
  (7)ネットワーク接続方法：ブリッジ型
  (8)仮想ディスクタイプ：IDE
  (9)仮想ディスクサイズ：32GB
  (10)仮想CD-ROM：ISO image(SLED-10-SP1-x86-DVD1.iso)指定
  
  
• 仮想マシンへのSLES 10 SP1のインストール
  仮想マシンへのSLES 10 SP1のインストール方法は実マシンへのインストール方法とほぼ同様のためここでは手順説明を省略します。
  但し、インストールする機能としてXENを含めるようにします。
  /boot/grub/menu.lstのXENエントリのkernel行にはdom0_mem指定がされませんがそのままにしておいて構いません。
  ※kernel行のdom0_memは明示指定する必要はありません。
  
  

• VMwareのCD-ROM定義
  VMwareのCD-ROM定義をSLED 10 SP1のインストールDVDイメージ(SLED-10-SP1-x86-DVD1.iso)指定にします。
  
  
• XENブート
  VMwareでSLES 10 SP1を起動する際、そのGRUBメニューでXENを選択します。
  
  
• Domain0のメモリ調整
  VMwareのSLES 10 SP1に割り当てたメモリ2048MBのうち1024MBをDomain0割り当てとするため以下のコマンドを実行します。
  
  # xm mem-set 0 1024m
  
  
• 仮想マシンマネージャの起動
  SLES 10 SP1の[コンピュータ]−[YaST]−[Virtualization]−[Virtual Machine Manager]で仮想マシンマネージャを起動します。
  ※[コンピュータ]−[YaST]−[Virtualization]−[仮想マシンの作成]でも仮想マシンマネージャを起動できます。
  
  
• 仮想システムの作成開始
  仮想マシンマネージャの＜新規＞ボタンを押して「Create a Virtual Machine」ウィザードを起動します。
  ＜進む＞ボタンで先に進みます。
  
  
• 仮想システムの定義
  今回は以下の仮想システム定義としました。
  (1)OS種別：SUSE Linux Enterprise Desktop 10の選択
  
  
  
  (2)仮想化方法：Paravirtualized
  (3)仮想マシン名：sled10(デフォルト値)
  (4)仮想メモリ：512MB
  (5)仮想ディスクファイル：/var/lib/xen/images/sled10/disk0 (4GB)
  (6)インストールソース：/dev/cdrom
  ※ここでの/dev/cdromはSLED 10 SP1のインストールDVDイメージ(SLED-10-SP1-x86-DVD1.iso)を指します。
  「Summary」画面で＜OK＞ボタンを押すと「Please wait installing...」と表示されます。
  
  
• 仮想マシンコンソール操作
  仮想マシンコンソールは実際のSLED 10 SP1インストールを操作するツールです。
  仮想マシンコンソール(TightVNC：VNCビューア)での操作の流れは以下のようになります。
  
  
  • Language
    デフォルトはEnglish(US)です。
    ここでは「日本語」を選択します。
    
    
  • ライセンス同意
    
    
  • インストールモード：新規インストール
    
    
  • インストールの設定
    ここはデフォルトのままとします。
    パーティションデバイスは以下の通りです。
    ・swap:/dev/xvda1
    ・root:/dev/xvda2
    
    
  • rootユーザのパスワード指定
    
    
  • パッケージのインストール
    
    
  • ホスト名：xensled10sp1
    
    
  • ネットワーク設定
    ホストマシン(Windows Vistaのマシン)の物理ネットワークに接続できる設定をします。
    尚、VNCリモート管理は[許可]設定に変更します。
    
    
  • ハードウェア設定
    グラフィックカードについては「エラー：選択肢がありません」と表示されます。
    グラフィックカードの指定変更はできないため「エラー：選択肢がありません」表示のままで構いません。
    
    
  • インストール完了
    インストールされたSLED 10 SP1パッケージ一覧はこちらです。
    
    
    
  • GDM表示とログイン
    インストール完了後にGDM画面が表示されます。
    言語で「日本語」を選択してrootでログインします。
    
    
  • デスクトップ操作
    DomainUの解像度は小さい(800x600x16)ですが仮想マシンコンソールでのGUI操作が可能です。
    日本語入力やネットワーク利用も行えます。
    
    
    
    実寸画像はこちらです。
    
    
  
  
• DomainU(SLED 10 SP1)構成ファイルの内容
  自動生成されたDomainU構成ファイル(/etc/xen/vm/sled10)は以下の内容になっています(kernel行はありません)。
  
  

  ostype="sled10" name="sled10" memory=512 vcpus=1 uuid="b7933961-46a9-1525-e722-6ae8ae0ee861" on_crash="destroy" on_poweroff="destroy" on_reboot="restart" localtime=0 builder="linux" bootloader="/usr/lib/xen/boot/domUloader.py" bootargs="--entry=xvda2:/boot/vmlinuz-xen,/boot/initrd-xen" extra="TERM=xterm " disk=[ 'file:/var/lib/xen/images/sled10/disk0,xvda,w', 'phy:/dev/cdrom,xvdb,r', ] vif=[ 'mac=00:16:3e:50:60:ec', ] vfb=["type=vnc,vncunused=1"]

  
  

• SLED 10 SP1側の設定確認
  
  
  • /etc/xinetd.d/vnc
    自動生成された/etc/xinetd.d/vncでは1024x768サイズ用のポート5901設定が含まれています。
    /etc/xinetd.d/vncの内容は次のようになっています。
    

    # default: off
    # description: This serves out a VNC connection which starts at a KDM login \
    #       prompt. This VNC connection has a resolution of 1024x768, 16bit depth.
    service vnc1
    {
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/Xvnc
            server_args     = :42 -inetd -once -query localhost -geometry 1024x768 -depth 16
            type            = UNLISTED
            port            = 5901
    }
    # default: off
    # description: This serves out a VNC connection which starts at a KDM login \
    #       prompt. This VNC connection has a resolution of 1280x1024, 16bit depth.
    service vnc2
    {
            type            = UNLISTED
            port            = 5902
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/Xvnc
            server_args     = :42 -inetd -once -query localhost -geometry 1280x1024 -depth 16
            disable         = yes
    }
    # default: off
    # description: This serves out a VNC connection which starts at a KDM login \
    #       prompt. This VNC connection has a resolution of 1600x1200, 16bit depth.
    service vnc3
    {
            type            = UNLISTED
            port            = 5903
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/Xvnc
            server_args     = :42 -inetd -once -query localhost -geometry 1600x1200 -depth 16
            disable         = yes
    }
    # default: off
    # description: This serves out the vncviewer Java applet for the VNC \
    #       server running on port 5901, (vnc port 1).
    service vnchttpd1
    {
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/vnc_inetd_httpd
            server_args     = 1024 768 5901
            type            = UNLISTED
            port            = 5801
    }
    # default: off
    # description: This serves out the vncviewer Java applet for the VNC \
    #       server running on port 5902, (vnc port 2).
    service vnchttpd2
    {
            type            = UNLISTED
            port            = 5802
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/vnc_inetd_httpd
            server_args     = 1280 1024 5902
            disable         = yes
    }
    # default: off
    # description: This serves out the vncviewer Java applet for the VNC \
    #       server running on port 5902, (vnc port 3).
    service vnchttpd3
    {
            type            = UNLISTED
            port            = 5803
            socket_type     = stream
            protocol        = tcp
            wait            = no
            user            = nobody
            server          = /usr/X11R6/bin/vnc_inetd_httpd
            server_args     = 1600 1200 5903
            disable         = yes
    }
    

  • ログイン画面の設定確認
    YaSTの[ログイン画面の設定]においてXDMCP接続でrootでログインできる設定がされていることも確認できます。
    
    
  
  
• Domain0からDomainUへのXDMCP接続例
  
  
  • vncviewerによるDomainUへのXDMCP接続
    以下のコマンドでvncviewerを起動します。
    
    # vncviewer xensled10sp1:1 &
    ※「:1」はポート5901(即ち1024x768の解像度利用)を指しています。
    
    
  • GDM表示とrootログイン
    GDM画面が表示されますのでrootでログインします。
    
    
    
    
  • VNCでのDomainU操作
    画面の右上の800x600サイズ部分が仮想マシンコンソールで、
    画面左下側の1024x768サイズ部分がVNC/XDMCP接続でのDomainUデスクトップ画面です。
    
    
    
    仮想コンソールと異なり、VNC/XDMCP接続では英字記号も問題なく入力できます。
    
    
  
  

• ブート直後のDomain0のメモリ確認(DomainU起動前)
  # xm list
  
  

  Name ID Mem VCPUs State Time(s) Domain-0 0 1894 1 r----- 139.6 sled10 512 1 0.0

  
  
• DomainUの起動
  Virtual Machine Managerを起動し、DomainUの仮想マシンを選択して＜開く＞を押して仮想マシンコンソールを開きます。
  
  
  
  仮想マシンコンソールの＜実行＞をクリックするとDomainUが起動しますがこの時にメモリ割り当て調整がなされます。
  
  
• DomainU起動後のDomain0のメモリ確認
  「Domain0メモリ + 起動されたDomainUメモリ ≒ VMwareの仮想マシン全体に割り当てたメモリ」となるように
  Domain0メモリが自動調整されます。
  # xm list
  
  

  Name ID Mem VCPUs State Time(s) Domain-0 0 1507 1 r----- 172.2 sled10 1 512 1 ------ 8.7