Fedora 11 Beta

2009年3月31日にFedora 11 Beta版(Fedora 10.92)がリリースされました。
※Fedora 11の開発コード名はLeonidasです。
未対策不具合はまだ残っているようですがFedora 10がリリースされた時とほぼ同レベルの動作確認をしてみました。

ここでは主に以下の点について紹介してみます。

尚、今回使用したPCのハードウェア構成は以下の通りです。
・CPU:Core 2 Duo E6600
・メモリ:3GB
・VGAカード:nVIDIA GeForce 7600 GT


  1. 基本インストール
    (1)Fedora-11-Beta-i386-DVD.isoから作成したインストール用DVDからブートします。
    (2)インストール中にネットワークカードは認識されますがネットワークの設定画面は出てきません。
    (ホスト名の設定画面は表示されます)
    インストール後のNetworkManagerでネットワークを利用可能にできます。
    今回はNetworkManagerを無効にし、通常のnetworkサービスを有効化して利用しました。
    (3)パーティション設定でのファイルシステムのデフォルトはext4となります。
    但し、/bootを含むパーティションのファイルシステムはext4にすることはできません(ext3を使用します)。
    (4)インストールするソフトウェアセットとしては下記を選択しました。
    ・オフィスとプロダクティビティ
    ・ソフトウェア開発
    ・Webサーバ
    更にパッケージのカスタマイズでFTPサーバ, サーバ設定ツール, ベースシステムのすべてを選択しました。
    尚、ベースシステムの「仮想化」については選択可能なものすべてを選択しました。
    このソフトウェアセット選択でインストールされたパッケージ一覧はこちらです。
    (5)Fedora 11で標準インストールされるカーネルパッケージはkernel-PAEです。
    (6)パッケージインストール完了画面が出たままインストール画面が(エラー)停止となる場合があります。
    しかしこの場合でもHDDからブートすると「ようこそ」画面が表示されますので特に支障はありません。

  2. GDMでのrootログイン
    従来通りデスクトップのデフォルトはGNOMEです。
    Fedora 10の場合と同様にGDMではrootのログインが許可されていません(gdmsetupもありません)。
    そこでFedora 10の場合と同様に以下のように設定ファイル(/etc/pam.d/gdm)を変更します。
    $ su - root
    # vi /etc/pam.d/gdm
    「auth required pam_succeed_if.so user != root quiet」行を「auth required pam_succeed_if.so」に変更します。
    これでGDMでのrootログインが可能となります。

  3. IBusの利用
    アジア圏の言語対応入力メソッドとして従来の制限付きSCIMの代りにIBusが標準採用されました。
    IBusとAnthyの組み合わせで日本語入力ができます。



  4. Compiz Fusion(0.7.8)
    (1)NVIDIAカーネルドライバの組み込み
    NVIDIAカーネルドライバはNVIDIAのサイトからNVIDIA-Linux-x86-vvv.pkg1.runをダウンロードして組み込みます(vvv部分はバージョン番号)。
    コンソールで以下のコマンドを実行してインストールを行います。
    (カーネルモジュールとしてコンパイルして/lib/modules/2.6.29-0.258.2.3.rc8.git2.fc11.i686.PAE/kernel/drivers/video/nvidia.koを作成)。
    # sh NVIDIA-Linux-x86-vvv.pkg1.run
    ※/etc/X11/xorg.confが存在しなくてもNVIDIAカーネルドライバインストール中にxorg.confを自動生成できます。

    (2)Compiz Fusion関連パッケージのインストール(Fedora 10と同様)
    # yum install compiz-fusion compiz-fusion-gnome
    # yum install compiz-fusion-extras
    # yum install compiz-manager
    # yum install ccsm fusion-icon emerald emerald-themes
    # yum install compiz-devel
    # yum install compiz-bcop
    # yum install git

    (3)Compiz Fusion利用例

    (4)Compiz Fusion 0.7.8での変更点
    Fedora 10付属のCompiz Fusion 0.7.6に比べてCompiz Fusion 0.7.8ではいくつか改善されています。
    例えばCompiz Fusion 0.7.6のアクセシビリティの「明度と彩度」は0.7.8では「Opacity, Brightness and Saturation」に改善されました。

    (5)http://www.compiz-fusion.org/では2009年3月9日にCompiz Fusion 0.8.2を公開しています。

  5. 仮想化機能(Xenner)
    Fedora 11 Beta付属のXenはXen 3.3.1です。
    Fedora 9, 10同様にFedora 11のXen機能ではFedora 11自体をDomain0としてブートさせることはできません。

    Fedora 11のXen関連パッケージ自体にはparavirt-ops対応のDomain0カーネルをサポートする機能が追加されています。
    しかしFedora 11付属のPAEカーネル(正確にはカーネルソース)側にはそのカーネルをDomain0として起動させる構成オプション自体が含まれていません。
    このためFedora 11付属のPAEカーネルを再構築してもそのカーネルをDomain0としてブートさせることはできません。
    ※Fedora 11をDomain0として実行させるにはFedora 11付属でない別のカーネルソースが必要になります。

    Domain0としての実行サポートはXen 3.4以降のようです。
    (KVM+QEMUが主流になりつつあるためDomain0サポートは実施されない可能性もあります)

    Fedora 10同様にFedora 11 Beta付属のXenner 0.46は期待通りの動作をしないようですが、
    とりあえずXenner 0.46環境を以下のコマンドで導入します。
    (KVM関連パッケージは導入済みでかつSELinuxは無効化されているものとします)
    # yum install xen ※xen-hypervisor, xen-runtimeもインストールされます。
    # yum install xenner
    # chkconfig --level 345 xenner on
    # chkconfig --list|grep xen
    xenconsoled    	0:off	1:off	2:off	3:on	4:on	5:on	6:off
    xend           	0:off	1:off	2:off	3:on	4:on	5:on	6:off
    xendomains     	0:off	1:off	2:off	3:on	4:on	5:on	6:off
    xenner         	0:off	1:off	2:off	3:on	4:on	5:on	6:off
    xenstored      	0:off	1:off	2:off	3:on	4:on	5:on	6:off
    

    # /etc/rc.d/init.d/xenner start



  6. QEMUパッケージの分割
    Fedora 11のQEMUパッケージ(rpmとしてのqemu)はメタパッケージ化され、実体のないパッケージとなりました。
    qemuパッケージをインストールしてrpm -ql qemuを実行すると「(contains no files)」という表示となります。
    実はFedora 11では従来のqemuパッケージとkvmパッケージがマージされています(例:qemu-kvm-tools[KVM診断ツール])。
    ※従来のkvmパッケージはqemu関連パッケージに吸収された扱いとなります。
    ※更にFedora 11のkvmパッケージも実体のないパッケージとなりました。
    従来のqemuパッケージは複数のサブパッケージ(例:qemu-system-x86, qemu-common等)に分割されました。
    パッケージの統廃合はありましたがQEMUは従来通りの使い方ができますので特に心配する必要はありません。
    QEMU自体はKVMとは異なりVMware環境でも利用できます。

    QEMUの導入と使用方法は以下の通りです。


  7. デスクトップゲストユーザ機能
    Fedora 11ではSELinuxを利用したデスクトップゲストユーザ機能がサポートされました。
    デスクトップゲストユーザ機能はシステムの利用権限が大幅に制限されたユーザ(xguest)をパスワードなしでログイン可能とする機能です。
    デスクトップゲストユーザの主な用途はWebブラウザの利用です。
    (1)デスクトップゲストユーザ機能を利用するためにはSELinuxが有効になっている必要があります。
    (/etc/sysconfig/selinuxにおいて「SELINUX=enforcing」指定になっていること)
    (2)デスクトップゲストユーザ機能のインストールはSELinuxが有効になっている状態で以下のコマンドで行います。
    (SELinuxが無効になっているとxguestパッケージのインストールスクリプトでエラーとなります)
    # yum install xguest
    (3)xguestパッケージをインストールするとxguestグループのxguestユーザアカウントが生成されます。
    (4)GDMにはGuestというユーザ名(フルネーム)が表示されます(アカウント自体はxguest)。
    (5)GDMに表示されるユーザリストでGuestを選択するとパスワード入力画面が表示されずにログインできます。
    (6)xguestアカウントのログインごとに/home/xguestが初期化されます(GNOMEカスタマイズ結果も初期化されます)。
    (7)xguestでは以下のようなコマンドは使用できません(権限エラー発生)。
    ・ping
    ・/bin/su
    ・ssh
    ・telnet
    ・ftp
    ・ls /boot
    尚、Compiz Fusion機能も利用できません。
    (8)/home/xguestでmkdirコマンドが使用できます(新規ファイルも作成可能)。
    (9)意識的にガードしなければxguestユーザで[システム]−[シャットダウン]メニューも実行可能となります。
    (10)xguestユーザのホームディレクトリ(/home/xguest)はログイン毎に初期化されます。
    (11)xguestユーザでのデスクトップ操作例
    (12)SELinuxが無効になっている場合、GDMに表示されるユーザリストでGuestを選択するとパスワード入力画面が表示されてしまいます。