KXenプレビュー版

2009年3月31日にCitrix XenServerをベースとした仮想化ソフトであるKXen(プレビュー版)が無償公開されました。
KXenプレビュー版が動作するホストOSは32ビット版のWindows XP/Vista及びWindows 7です。
KXenは「XenのHVMゲストをQEMUライクのコマンドで実行する仮想化ソフト」と考えるとよいかと思います。
将来的にはXen 3.4ベースのKXenがリリースされるようです。
KXen化の流れが進むと従来のXenの準仮想化は次第に使用されなくなると思われます。

(1)KXenはHosted Xen projectというプロジェクトの名前でもあります。
(2)KXenはXenのコア部分をType-2 VMM(仮想マシンモニタ)として実行します。
・Type-1 VMM：ベアマシン上で直接動作するVMM(例：Xen Hypervisor/XenServer, VMware ESX Server)
・Type-2 VMM：ホストOS上でのユーザプログラムとして動作するVMM(例：KVM/QEMU, VMware Server)
※VMware Server 2.0では準仮想化カーネルを動作させるVMI Paravirtualizationオプションが使用可能。
(3)KXenを実行するにはXenのHVMドメイン(HVMゲスト)を実行する場合と同様にVT対応CPUが必要です。
(4)KXenはそのVT対応CPUをXen仮想CPUとして使用します。
(5)KXenで実行させるゲストOSのカーネルとしてPAE専用カーネルは使用できないようです。
(6)KXenで実行させるゲストOSはQEMU on WindowsやHVMのコマンド(qemu-dmコマンド)ライクのコマンドで起動できます。
例：ioemu.exe -domain-name VM1 -boot c -hda guestos.img -m 256 -net tap,ifname=TAPインタフェース名 -net nic,vlan=0,macaddr=62:5c:15:0c:2c:93,model=rtl8139 -sdl ...
(7)KXenでのネットワークはTAP型のためKXenゲストを(インターネット)サーバとして利用するにはサービスのホスティング設定が必要となります。
※Xenではブリッジ型でホストOSと同じネットワーク体系となるため(インターネット)サーバとして利用するのは比較的容易です。

ここではKXenプレビュー版環境でUbuntu 8.04デスクトップOSを実行させる手順を中心に紹介します。


１．マシン環境

今回KXenプレビュー版を動作させたホストマシン環境は以下の通りです。

• CPU：Core 2 Duo E6600
  
• メモリ：3GB
  
• LANカード：Intel PRO/100 S
  
• ホストOS：Windows XP SP2
  

• OpenVPNのインストール
  OpenVPNではTAP-Win32 Virtual Ethernet Adapter(TAP-Win32 Adapter V8)もインストールされます。
  
  
• OpenVPNに含まれるTAP-Win32 Adapterの設定
  TAP-Win32 Adapter用のローカルエリア接続のTCP/IPを次のように設定します。
  (尚、この接続名はここでは「TAP-Win32-LAN」としておきます)
  IPアドレス：192.168.0.1
  サブネットマスク：255.255.255.0
  デフォルトゲートウェイ：無し
  優先DNSサーバー：これは環境依存
  
  
• ホストOSのネットワークに対する「インターネット接続の共有」設定
  ホストOSの実際のネットワークカードに対するローカルエリア接続定義のプロパティで
  「ネットワークのほかのユーザーに、このコンピュータのインターネット接続をとおしての接続を許可する」にチェックを入れます。
  更に、ホームネットワーク接続のプルダウンメニューからTAP-Win32 Adapter用のローカルエリア接続定義名(TAP-Win32-LAN)を選択しておきます。
  
  

• KXenゲスト(Ubuntu 8.04デスクトップOS)の仮想ディスクの準備
  今回はXen 3.2(Ubuntu 8.04デスクトップ編)で紹介したKVMドメインゲストの仮想ディスク(anyubt8041flat4gb.img)をそのまま使用しました。
  ※KVMドメインゲストはQEMU, HVM, PVドメインでも実行させることができます。
  
  
• KXenゲスト起動用BATファイルの準備
  KXenプレビュー版にはKXenゲスト起動用BATファイルサンプル(startvm.bat)が付属しています。
  (KXenプレビュー版にはデモ用仮想ディスクは付属していません)
  このstartvm.batを別ファイル(例：startvmanyu804.bat)にコピーして内容変更して利用します。
  
  startvmanyu804.batの内容変更後は以下の通りです。
  
  

  set MEMORY=512 set DISKIMAGE=images\anyubt8041flat4gb.img set MACADDRESS=62:5c:15:0c:2c:93 set NICTYPE=rtl8139 ioemu.exe -domain-name VM1 -geometry 640x400 -boot c -hda %DISKIMAGE% -d 1 ※便宜上ここで改行(実際には改行なし) -m %MEMORY% -vcpus 1 -net tap,ifname=TAP-Win32-LAN -net nic,vlan=0,macaddr=%MACADDRESS%,model=%NICTYPE% -k ja -sdl

  
  [ioemu.exeのパラメータ補足]
  (1)-domain-name：ドメイン名(必須)
  (2)-geometry：省略可能
  (3)-d：1から指定(必須)
  (4)-net：user指定は不可(QEMUとは異なります)。
  (5)macaddrのデフォルトは52:54:00:12:34:56です。
  (6)modelのデフォルトはRealTek RTL-8029です。
  ※model=rtl8139はRTL-8139C+を指します。
  
  
• KXenゲストの起動
  上記で作成したstartvmanyu804.batを実行するとKXenゲストが起動します。
  そのKXenゲストのGRUBメニューで通常カーネルを選択します。
  
  
• KXenゲスト操作
  KXenゲストについての補足；
  ・MACアドレスは62:5c:15:0c:2c:93となります。
  ・IPアドレスはNAT型のアドレスになります。
  ・dmesg|grep paravirtでは「Booting paravirtualized kernel on bare hardware」と表示されます。
  ・実マシンのCPUはCore 2 Duo E6600であり、KXenゲストの中でもそれが認識されます。
  
  
  
  

• 「Create a new virtual system」ウィザードの起動と設定
  (1)仮想マシンマネジャのlocalhost qemuに接続します。
  (2)localhost qemuを選択して＜新規＞で「Create a new virtual system」ウィザードを起動します。
  (3)「Create a new virtual system」ウィザードでは以下の設定をします。
  ・System Name：kvmu810desktop
  ・Virtualization method：Fully Virtualized
  ・Enable kernel/hardware acceleration：on
  ・ISO Image Location：Ubuntu 8.10デスクトップOSのCDイメージファイル(ubuntu-ja-8.10-desktop-i386.iso)のパスをを選択
  ・File Location：/guest2/kvmu810desktop.img ※4000MB
  ・Connect to host network：Virtual networkを選択
  ・Memory：512MB
  ・VCPU：1
  ＜Finish＞ボタンを押すと仮想ディスクが作成されてUbuntu 8.10デスクトップOSのインストールメニューが表示されます。
  メニューでは[コンピュータに変更を加えないでUbuntuを使ってみる]を選択します。
  やがてプログレスバーが表示されて見慣れたLiveデスクトップが表示されます。
  
  
• Liveデスクトップ操作例
  
  
• KVMドメインゲストのインストールと設定
  (1)Liveデスクトップ上の「インストール」アイコンをダブルクリックしてインストーラを起動します。
  (2)インストーラでは言語選択、タイムゾーン設定、キーボードレイアウト設定に続いてパーティション設定を行います。
  今回は4000MBすべてを/dev/sda1パーティションとして割り当てました(swapパーティションなし)。
  (3)ユーザアカウント(ubuntu)を定義してインストールの準備が完了します。
  (4)その後、パッケージのインストール、システム設定、ブートローダのインストールが行われます。
  (5)インストール完了後再起動します。
  自動再起動は行われません。
  (6)仮想マシンコンソールで＜Run＞を押してKVMドメイン用ゲストを起動します(GDM画面でログインします)。
  (7)sshサーバのインストール
  # apt-get update
  # apt-get install openssh-server
  (8)[システム]−[システム管理]−[ログイン画面]でXDMCP接続を許可する設定を行います。
  必要に応じてrootで日本語デスクトップが使用できるように追加設定も行います。
  (9)KVMドメインゲストの起動は内部的に以下のコマンドが実行されています。
  

  /usr/bin/kvm -M pc -m 512 -smp 1 -monitor pty -drive file=/guest2/kvmu810desktop.img,if=ide,boot=on \ -net nic,macaddr=00:16:3e:53:9f:76,vlan=0,model=virtio -net tap,fd=12,script=,vlan=0 -usb -vnc 127.0.0.1:1

  
  (10)KVMドメインゲストのデスクトップ
  KVMドメインゲストについての補足；
  ・MACアドレスは00:16:3e:53:9f:76となります。
  ・ホスト側にはvnet0(IP:192.168.122.1)が最初から存在しKVMゲストを起動するとvnet1が自動生成されます。
  ・kvmパッケージは/etc/kvm/kvm-ifupを含みますがここではそれは利用されません。
  ・KVMゲストのIPアドレスはNAT型のアドレスになります。
  ホスト側では以下のコマンドでKVMゲストのIPアドレスを確認できます。
  

  # cat /var/lib/libvirt/dhcp-default.leases 1241055585 00:16:3e:53:9f:76 192.168.122.208 ubuntu *

  ・dmesg|grep paravirtでは「Booting paravirtualized kernel on KVM」と表示されます。
  ・実マシンのCPUはCore 2 Duo E6600ですが、KVMドメインゲストの中ではCPUが「QEMU Virtual CPU」と認識されます。