オープンギャラリー：Xen 3.0.4(XenExpress編)

Xen 3.0.4(XenExpress編)

Xen関連の製品ファミリーはXenSource社によって提供されています。
その主要製品はXenEnterpriseとXenServerです。
XenSource社はXenServerの無償版としてXenExpressをリリースしています。
2007年3月にXenExpress 3.2が公開されました(Xen 3.0.4版)。
XenExpressはXenを動作させることに特化したLinuxです。
※XenExpress 3.2はCentOS 4.4をベースにして開発されたLinux OSです。

XenExpressの特徴は以下の通りです。
(1)XenExpressの実体はXenServerとほぼ同じでありXenExpress環境では「XenExpress」という用語は見当たりません。
(2)XenExpressは準仮想化と完全仮想化をサポートしていますが完全仮想化に対応していないマシンにもXenExpressを導入できます。
(3)XenExpressにはXenServer管理コンソール(別名：XenServerクライアント)が付属しておりXenServerマシンをリモート管理できます。
(4)XenServer管理コンソールを使用してXenExpress本体マシンにゲストOS(XenVM：Xen仮想マシン)をインストールすることができます。
(5)XenExpressにはいくつかのゲストOSインストール用テンプレートが付属しています。
(6)XenExpressは標準でDomain0が自動起動されるのでXenServer管理コンソールを使用しなくてもゲストOSを実行できます。
(7)XenExpressはLinux用(またはWindows用)のXenServer管理コンソール(GUIインタフェース)から接続して利用されることを前提にしておりXenExpress自体にはデスクトップ環境は付属していません。
(8)物理OS環境を仮想OS環境に変換するP2V機能があります。
(9)その他にも仮想環境のエクスポート・インポート等の機能も付いています。

ここではXenExpress 3.2の環境自体にGNOMEデスクトップ環境とXenServer管理コンソールを導入し、簡単にXenExpressを利用する方法を紹介します。

尚、XenExpressをCentOS 5にアップグレードする方法には以下の2種類あります。
(1)XenExpressインストール直後にCentOS 5にアップグレードする(詳細はこちら)。
(2)XenExpressにCentOS 4.4のGUI環境を導入してからCentOS 5にアップグレードする(詳細はこちら)。

１．XenExpress(XenServer)のインストール

XenExpressパッケージの取得
xensource(http://www.xensource.com)から以下のファイルを取得してCD-ROMを作成します。
- XenServer-3.2.0-install-cd.iso
  これはXenServer本体のブータブルCDのイメージです。
  Windows用のXenServer管理コンソールもここに含まれています。
- XenServer-3.2.0-linux-cd.iso
  これはゲストOSインストール用テンプレートとLinux用のXenServer管理コンソールを含んでいます(Linux Packとも言います)。
  XenServer本体インストール時に本CDをセカンドCDとして指定することでゲストOSインストール用テンプレートをインストールできます。
XenServer本体のインストール
XenServer本体のインストーラは無条件にHDDのパーティションを自動構成します。
そのため他のOSの入っていないHDD(または完全にデータ抹消されても構わないHDD)にXenServer本体をインストールします。
- XenServer本体のブータブルCDからのブート
  インストーラは英語です。
- 「Welcome to XenServer」画面
- 「Select Keymap」画面
  jp106を指定します。
- 「Please select an operation」画面
  ＜Install XenServer Host＞を選択します。
  ※物理マシンを仮想環境にする選択もできます。
- 「End User License Agreement」画面
- 「System Hardware」画面
  マシンが完全仮想化に対応していない場合は使用できる機能に制限が付く旨の警告が表示されます。
- 「Select Installation Source」画面
  Local media(CD-ROM)を選択します。
- 「Linux Pack」画面
  Linux Pack(ゲストOSテンプレート)のインストール有無を回答します(Yes選択)。
- メディア検証(Verifyオプション)画面
- 「Set Password」画面
  rootユーザのパスワードをここで指定します。
- 「Time Zone」画面
  Asia/Tokyoを選択します。
- 「Network Configuration」画面
  DHCPの利用またはIPアドレスを指定します。
- 「Hostname and DNS Configuration」画面
  今回ホスト名は「xenserver32」(32はVersion 3.2の意)としました。
  DNSサーバのアドレスも指定します。
- 「Confirm Installation」画面
  HDDの中身が完全に破壊されることの確認画面です。
- 「Installing XenServer」画面
  CDからパッケージがインストールされます。
- 「New Media」画面
  ここでLinux PackのCDに交換します。
- 日付・時刻設定
- 「Installation Complete」画面
  インストールの完了です。
- インストールされたパッケージ一覧
  インストールされるカーネル関連パッケージは以下の3個です。
  (1)kernel-kdump-2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960
  (2)kernel-utils-2.4-13.1.83
  (3)kernel-xen-2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960
GRUBメニュー
GRUBメニューには以下のものがあります。
(1)XenServer ※デフォルトです
(2)XenServer (Serial)
(3)XenServer in Safe Mode
(4)XenServer (Xen 3.0.4.1 / Linux 2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen)
(5)XenServer (Serial, Xen 3.0.4.1 / Linux 2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen)
ブート確認
デフォルトのXenServerが起動することを確認します。
テキストログインプロンプト
rootユーザでログインします。
通常はここですることは特にはありません。
※通常はここではログインせずに別マシンにインストールするXenServer管理コンソールからXenServerに接続して利用します。

２．パーティション構成の変更(任意：但しCentOS 4.4のGUI環境を導入してからCentOS 5にアップグレードする場合は必須)

XenExpressのXenServer本体のインストールではHDDが3パーティションに自動分割されます。
※S-ATAのHDDの場合は/dev/hda1,2,..を/dev/sda1,2,..に読み替えて下さい。
(1)/dev/hda1：ルートパーティション(サイズは4GB固定)
(2)/dev/hda2：バックアップ用の特別なパーティション(サイズは4GB固定)
※「Back-up Existing Installation」オプション指定の上書きインストールでは/dev/hda1の内容がこの/dev/hda2に自動バックアップされます。
※「Perform clean install」というインストールタイプの場合は/dev/hda2の内容は破壊されずに残ります(mkfsはユーザ自身が実施)。
(3)/dev/hda3：仮想ディスクを論理ボリュームとして格納するパーティション(サイズは残りの容量すべて)

XenExpressのXenServer本体にデスクトップ環境を導入しないのであれば上記パーティション構成のままで問題ありません。
しかし後で紹介する日本語GNOME環境をインストールすると/dev/hda1パーティションの空き容量は約400MBにまで減ってしまいます。
日本語GNOME環境以外にもいろいろなアプリケーションを導入するには容量面で不安があります。
そこで新しいパーティションを作成して/dev/hda1の中で最もスペース占有率の高い/usrをその新しいパーティションに割当てる方法をここで紹介します。
尚、パーティション再構成を最も簡単にかつ安全に行えるのはXenExpressのXenServerに仮想マシンを作成する前の段階です。
※インストール時/dev/hda3には論理ボリュームグループが初期作成されますがリブート時にそれが無い場合は自動的に初期状態の論理ボリュームグループが作成されます。

fdisk /dev/hdaの実行によるパーティション再設定
fdisk /dev/hdaを実行し、まずパーティション3をdコマンドで削除します。
次にnコマンドでパーティション3を新しいサイズ指定で再作成します(パーティションIDは「83」のままで構いません)。
最後に/usrに割当てるパーティション4を作成します。

パーティション再設定後はwコマンドでfdiskを終了させます。
※/dev/hda3に論理ボリュームグループと初期状態の論理ボリューム(名称はSRMでサイズは2GB)をユーザが復元させておく必要はありません。
リブート
ここで一旦リブートします。
パーティション4の/usr割り当て
- パーティション4へのファイルシステムの作成
  # mkfs -t ext3 /dev/hda4
  ※/dev/hda4直下にできる「lost+found」ディレクトリは削除する必要はありません。
- /usrのコピー
  以下の操作で/usrをパーティション4にコピーします(コピー後は元の/usrを別名で退避しておきます：後述)。
  # mount /dev/hda4 /mnt
  # cp -Ra /usr/* /mnt
  # umount /mnt
- /etc/fstabの変更
  # vi /etc/fstab
  ファイルの最後に以下の行を追加します。
```
/dev/hda4   /usr      ext3   defaults   1  1
```
- /usrの一時的退避
  念のため元の/usrを/usr.orgとして一時的に退避させます。
  # mv /usr /usr.org
- マウントポイントの作成
  # mkdir /usr
リブート
# reboot
/usr.orgの削除
リブート後新しいパーティション4が/usrにマウントされていることを確認します(dfやlsコマンド等で確認)。
その後/usr.orgを削除します。
# rm -Rf /usr.org

これで余裕を持ってアプリケーションを追加したりOSをアップグレードしたりできるようになります。

３．XenServerへの日本語GNOME環境の導入

yumコマンドを使用して日本語GNOME環境を導入します。
※XenServer付属のyumコマンドはCentOS 4.xの最新リポジトリからパッケージをインストールしてくれます。

rpmパッケージのインストール
# yum groupinstall "X Window System"
# yum groupinstall "GNOME Desktop Environment"
# yum install fonts* ※fonts-ja, fonts-xorg-truetype等を含みます
# yum install ttfonts-ja
# yum install man-pages-ja
# yum install Canna
# yum install iiimf-*
# yum install firefox ※任意
# yum install gimp gimp-data-extras gimp-gap gimp-help ※任意
# yum install ftp ※任意(scpが使用できるためftpは任意)
# yum clean all
設定ファイルの変更
# vi /etc/sysconfig/i18n(新規作成)
[内容]
LANG="ja_JP.UTF-8"
SYSFONT="latarcyrheb-sun16"
SUPPORTED="ja_JP.UTF-8:ja_JP:ja"

# vi /etc/inittab
id:3:initdefault:の「3」を「5」に変更します(ランレベルの変更)。
更に、本inittabの最後に次の2行を追加します。
# Run xdm in runlevel 5 ※これはコメント行です。
x:5:respawn:/etc/X11/prefdm -nodaemon
再起動
この再起動でのStarting xfs直後にsystem-config-displayが自動起動されてXの解像度等を指定します( /etc/X11/xorg.confに設定内容が保存されます)。
Welcome画面(英語表示)
日本語版「ようこそ」画面と同様に日付と時刻の設定、一般ユーザアカウントの作成等を行います。
グラフィカルログイン画面
Welcome画面でのウィザード終了後、GDMグラフィカルログイン画面が日本語表示されます。

rootでログインします。

URL警告
ログイン直後以下のメッセージダイアログが表示されることがあります。

xenserver32のURLが見つかりませんでした。
そのため、GNOMEが正しく動作しなくなるおそれがあります。
/etc/hostsファイルにxenserver32を追加することで
この問題を解決できる場合があります。

この場合、＜とにかくログインする＞ボタンを押すと日本語GNOMEデスクトップが問題なく表示されます。

/etc/hostsにxenserver32を追加しておきます。

Xの設定変更
キーボード設定は日本語キーボードになっていませんので/etc/X11/xorg.confを編集します。
# vi /etc/X11/xorg.conf
Option "XkbModel" "pc105"を"jp106"に変更します。
Option "XkbLayout" "us"を"jp"に変更します。

尚、画面サイズが小さい場合は[アプリケーション]－[システム設定]－[ディスプレイ]でモニター種別と解像度を変更します。
X-Windowシステムキーボード設定の有効化
次回のGDMでログインすると以下のメッセージダイアログが表示されます。
X-Window システムのキーボード設定が、現在お使いの GNOMEキーボード設定と異なります。どちらの設定を利用しますか？
＜Xの設定を使う＞ボタンを押すと自動的にGNOMEキーボード設定も日本語キーボード設定になります。

\ | _ 等の記号入力も問題なく行えます。
更にCtrl+Spaceによる日本語変換操作も問題なく行えます。
アプリケーションの追加(任意)
firefoxでhttp://www.adobe.co.jp/を開きAdobe Reader 7.0.x(日本語版)用rpmファイルをダウンロードしてインストールします。
firefoxへのアドイン化は/usr/local/Adobe/Acrobat7.0/Browser直下で./install_browser_pluginを起動して行えます。
(1)Adobe Reader 7.0 のインストール先ディレクトリ：/usr/local/Adobe/Acrobat7.0
(2)ブラウザのインストール先ディレクトリ：/usr/lib/firefox-1.5.0.12

下記はfirefoxの中でXenServerの日本語ユーザマニュアルを閲覧している様子です。

４．XenServer管理コンソールのインストール

Linux PackのCDセット
Linux PackのCD(XenServer-3.2.0-linux-cd.iso版)をセットします。
パッケージのインストール
# mount -r /dev/cdrom /mnt
# cd /mnt/client_install
# rpm -ivh *.rpm
# cd
# umount /mnt
メニュー確認
ここで再ログインすると[アプリケーション]メニューの[システムツール]に[Xensource XenServer Client]が表示されます。
この[Xensource XenServer Client]がXenServer管理コンソールの起動メニューとなります。

５．XenServer管理コンソールの起動

XenServer管理コンソールの起動
[Xensource XenServer Client]メニューでXenServer管理コンソールを起動します。
ロゴが表示されます。
Masterパスワードの設定
保存データの暗号化用パスワードを設定します。
XenServerログイン画面
XenServerホストとして「localhost」を指定し、rootユーザのパスワードを指定してログインします。

管理コンソールが表示されてXenServerに接続された状態となります。

尚、XenServerをインストールしたマシンで自動起動のxenagentdデーモンを手動終了させてしまうと管理コンソールが利用できなくなります。

６．XenServer管理コンソールによるDebian 3.1のインストール

XenExpress付属のLinux Packに含まれるDebian用テンプレートを用いてDebian GNU/Linux 3.1(Sarge)をゲストOSとしてインストールできます。
その具体的手順は以下の通りです。

ゲストOS専用インストーラの起動
XenServer管理コンソールに表示されるXenServer本体の行を選択して[Server]－[Install XenVM]を起動します。
ゲストOS情報の指定
(1)Install From：OSプルダウンメニューからDebian Sarge Guest Templateを選択します。

(2)Name：Sarge01を指定
(3)Description：Debian Sarge 01を指定
インストールの開始
管理コンソールの右下にある＜Install＞ボタンを押すとインストールが開始されます。
パスワード設定
以下のパスワード入力が要求されます。
(1)rootパスワードを指定します。
(2)DebianにはVNCサーバがインストールされます。管理コンソールからGUI操作ができるようにVNC用パスワードも指定します。
ホスト名の指定
ホスト名指定の要求に対して「sarge01」というホスト名を指定しました。
ネットワーク設定
ネットワーク設定のデフォルトはDHCP利用となります。
もしDHCPを利用しない場合は以下のようにします。
- /etc/network/interfacesの変更
  # vi /etc/network/interfaces
  iface eth0 inet dhcpという内容を例えば以下のように変更します。
  iface eth0 inet static address 192.168.0.xx netmask 255.255.255.0 gateway 192.168.0.yy
- /etc/resolv.confの設定
  # vi /etc/resolv.conf
  nameserver行を追加します。
- ネットワークの再起動
  # /etc/init.d/networking restart
インストールしたゲストOSの起動
ゲストOS(XenVM)がインストールされると自動起動されます。

自動起動されない場合はそのゲストOSを選択して＜Power On＞します。
テキストコンソール
テキストコンソールでブートメッセージを確認できます。
またテキストログインしてコマンド操作も行えます。
グラフィカルコンソール
グラフィカルコンソールに切り替えるとVNCパスワードが要求されます。

その後はVNC経由でのGUI操作が行えます。
Debianの場合はGDMログイン画面とXFceデスクトップが表示されます。

「Overview」タブに切り替えるとグラフィカルコンソールのサムネールが表示されます。

補足(ゲストOSの仮想ディスクの所在等)

ゲストOSの構成
ゲストOSの構成は管理コンソールの「Overview」タブで確認できます。

ドメイン構成ファイル
ゲストOSのドメイン構成ファイルは論理ボリューム(LV)の中に自動作成されます。
lvscanを実行すると/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/SRMという論理ボリュームが表示されます。
この論理ボリュームは/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/SRMにマウントされています。
/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/SRM/configs直下の
629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1-configファイルがゲストOSのドメイン構成ファイルです。
このドメイン構成ファイルの中は以下のような記述内容になっています。

("vm" ("device" ("vif" ("mac" "00:16:3E:2A:00:C2") ("script" "vif-bridge") ("bridge" "xenbr0"))) 
("device" ("vbd" ("uname" "phy:/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvda") 
("dev" "xvda") ("mode" "w"))) 
("device" ("vbd" ("uname" "phy:/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvdb") 
("dev" "xvdb") ("mode" "w"))) 
("image" ("linux" ("apic" "1") ("acpi" "1") ("nx" "0") ("pae" "1") ("usbdevice" "tablet") ("usb" "1") 
("sdl" "0") ("serial" "pty") ("vnc" "1") ("rtc_timeoffset" "0") 
("root" "/dev/xvda ro"))) 
("bootloader_args" "-q --default_args=\"root=/dev/xvda1 ro\" --extra_args=\"quiet\" /SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvda") 
("bootloader" "/usr/bin/pygrub") 
("memory" "256") 
("name" "629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1") 
("on_crash" "restart") ("uuid" "629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1") 
("vcpus" "1") 
("ssidref" "0"))

管理コンソールでゲストOSを＜Power On＞すると以下のコマンドが内部起動されます。
# xm create -F /SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/SRM/configs/629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1-config
上記コマンドを手動起動しても管理コンソール上でゲストOSがPower On状態になります。

仮想ディスクの所在
ゲストOSの仮想ディスクも論理ボリューム(LV)として作成されます。
lvscanの結果とドメイン構成ファイルの内容照合によってゲストOSの仮想ディスクとなっている論理ボリュームを把握することができます。
今回の例では以下の論理ボリュームが作成されています。
(1)xvda用論理ボリューム：/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvda (5120MB)
(2)xvdb用論理ボリューム：/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvdb (512MB)

尚、/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvdaは
/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvdaへのリンクになっています。
論理ボリュームの内容確認
今回作成されたDebian(ゲストOS)のルートパーティションを/mntにマウントして内容確認してみました。
※マウント用のコマンドは「mount -o offset=32256 /dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-629ed865-816d-44a5-8050-cdc84757a7c1.xvda /mnt」です。

７．Debian以外のゲストOSのインストールについて

RedHat Enterprise Linux 4.4
OS情報として「RedHat Enterprise Linux 4.4 Repository」を選択してインストールを開始します。
リポジトリからのインストールとなるためネットワーク設定情報に加えて、ftp/httpサイト情報やディレクトリ情報を指定してインストールします。
※Fedora Core 6の仮想マシンコンソールからのゲストOSインストール方式に類似した方式となります。
Red Hat Enterprise Linux 5
Red Hat Enterprise Linux 5のインストールでは完全仮想化のマシン環境が必要となります。

８．他のOSでのXenServer管理コンソールの利用

Fedora Core 6からのXenServer管理コンソール利用
Fedora Core 6(FC6)にXenServer管理コンソールをインストールしてXenServerに接続してみました。
Windows XPからのXenServer管理コンソール利用
Windows XPにXenServer管理コンソール(Administrator Console)をインストールしてXenServerに接続してみました。
Windows版XenServer管理コンソールからのWindows XPのインストール
Windows版XenServer管理コンソールを使用してWindows XPをインストールする流れは以下のようになります。
- Windows版XenServer管理コンソールの起動
- ゲストOSインストールメニュー
  管理コンソールの[Server]－[Install XenVM]メニューを選択します。
- ゲストOS構成定義
  Install Fromで＜Windows XP Service Pack 2＞を選択します。
  Nameは例えばWindows XPとします。
  仮想ディスクのデフォルトは8192MBとなります。
- インストールCDのセット
  XenServer本体側のCD-ROMドライブにWindows XP SP2のインストールCDをセットします。
- インストールの開始
  「Install XenVM」タブの画面の右下にある＜Install＞ボタンを押すとインストールCDからのインストールが開始されます。
  インストール操作はWindows版XenServer管理コンソールの「Graphical Console」タブに表示される画面で通常通りのインストール操作が行えます。
- インストール中のサーバ側プロセス
  WindowsのインストールはHVM(Xenの完全仮想化)環境で実行されます。
  このためpsコマンドで見ると/usr/lib/xen/bin/qemu-dmが動いているのが確認できます。

９．P2V機能(物理OS環境を仮想OS環境に変換する機能)について

XenExpressでは以下のOSを仮想環境イメージに変換できます。
(1)Red Hat Enterprise Linux 3.6または4.1
(2)SUSE Linux Enterprise Server 9 SP2

Red Hat Enterprise Linux 4.1の場合のP2V変換の流れは以下のようになります。
尚、Vine Linux 4についても手順を一部変更するだけでP2V機能を利用できます(後述)。

Red Hat Enterprise Linux 4.1環境でのXenExpress CD起動
Red Hat Enterprise Linux 4.1のマシン環境でXenExpressのインストールCDからブートします。
P2V操作の選択
「Please select an operation」画面で「Convert an existing OS on this machine to a XenVM (P2V)」を選択します。
ネットワークの設定
P2Vを実行するためのネットワーク設定を行います。
これはCDからブートした環境でのネットワーク設定です。
OS選択
XenExpressがHDDの中を調査し、P2V変換対象OSが見つかればP2V変換対象にするOS選択画面を表示します。
Description指定
XenServerで管理するようになる仮想環境のコメントを指定します。
ボリュームサイズ指定
XenServer上に作成する仮想環境用ボリュームサイズをMB単位で指定します。
ターゲット指定
XenServer Hostを選択します。
XenServerホストの指定
XenServerホストのホスト名またはIPアドレスを指定します。
rootパスワード指定
XenServerホストに接続するためのXenServerホスト側rootパスワードを指定します。
ファイルシステム転送
物理ディスクを仮想ディスクにしてXenServerホスト側に転送する処理が開始されます。
「Finish P2V」画面
仮想ディスクをXenServerホスト側に転送する処理が完了すると「Finish P2V」画面が表示されますのでP2Vは終了です。
P2Vされた仮想マシンの起動
P2Vが完了するとXenServer管理コンソール上に「P2V of Red Hat」が表示されます。
完全仮想化環境の場合、「P2V of Red Hat」を＜Power On＞することでそのRed Hat Enterprise Linux 4.1が起動します。

Vine Linux 4へのP2V機能の適用例
物理Vine Linux 4のマシンでXenExpressインストールCDからブートしてP2Vを適用しようとしてもVine LinuxはP2Vの未サポートOSとしてはじかれてしまいます。
そこでVine Linux 4に/etc/redhat-releaseファイルを一時的に用意し、P2V完了後に/etc/redhat-releaseファイルを削除するようにします。
尚、P2V化されたOSはHVMドメインとして実行させるのが普通ですがここではそのVine Linux 4をDomainUとしても動作できるようにしてみます。
その手順は以下の通りです。

Vine Linux 4用DomainUへのGUIログイン環境の構築(VNCサーバと仮想フレームバッファの導入)
VNCクライアントから実ビデオカードを持たないDomainU(Vine Linux 4)にXDMCP接続してGUI操作できるように仮想フレームバッファを導入します。
その詳細手順は「仮想フレームバッファ(Vine Linux 4.0編)」を参照して下さい(手順変更は不要です)。
/etc/redhat-releaseファイルの一時的作成
Vine Linux 4に対して/etc/redhat-releaseというテキストファイルを用意します。
その内容は「Red Hat Enterprise Linux ES release 4 (Nahant Update 1)」とします。
Vine Linux 4環境でのXenExpress CD起動とP2Vの実行
Red Hat Enterprise Linux 4.1の場合と同様にXenExpress CDからブートしてP2Vを実行します。
P2V完了後に物理Vine Linux 4側の/etc/redhat-releaseファイルを削除します。
仮想Vine Linux 4について
P2Vで作成された仮想Vine Linux 4の仮想ディスク(正確にはパーティションイメージ)は論理ボリューム(LV)としてXenServer側に格納されます。
またその仮想Vine Linux 4をHVMドメインとして実行するためのHVMドメイン構成ファイルも論理ボリューム(LV)に自動作成されます。
lvscanの結果とそのHVMドメイン構成ファイルの内容照合によってVine Linux 4の仮想ディスクとなっている論理ボリュームを把握することができます。
ここではその論理ボリュームを/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-58a02945-aa23-4eb1-90cf-881be4c93c0c.sda1とします。
仮想Vine Linux 4用仮想ディスクの一部変更
XenServer側に転送された仮想Vine Linux 4をDomainUでも動作するようにその仮想ディスク内を一部変更します。
仮想ディスクの変更点は以下の3点です。
(1)Xenカーネルモジュールの格納。
(2)/etc/fstabの「LABEL=/」部分を「/dev/sda1」に変更。
(3)/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0からのHWADDR行の削除。

尚、物理OSの物理ディスクがIDEであってもP2Vで作成される仮想ディスクはSCSIタイプになって、かつMBRレコード部分は除外されます。

# mount /dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-58a02945-aa23-4eb1-90cf-881be4c93c0c.sda1 /mnt
※ここで指定するデバイス名はlvscanで確認できます。
# rm /mnt/etc/redhat-release
# cp -Ra /lib/modules/2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen /mnt/lib/modules
# vi /mnt/etc/fstab
「LABEL=/」部分を「/dev/sda1」に変更します。
# vi /mnt/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0
HWADDR行を削除します。
# umount /mnt

仮想Vine Linux 4用DomainU構成ファイルの作成
以下の内容をもつVine Linux 4(DomainU)用ドメイン構成ファイル(/etc/xen/xmp2vvine40u)を用意します。
ここで/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/58a02945-aa23-4eb1-90cf-881be4c93c0c.sda1はP2Vの実行で
/dev/VG_XenStorage-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/LV-58a02945-aa23-4eb1-90cf-881be4c93c0c.sda1へのリンクとして自動作成されたものを指します。

kernel = "/boot/vmlinuz-2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen"
memory = 256
name = "Vine40U"
vif = [ 'mac=00:16:3e:00:00:11, bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'file:/SR-17e1e398-26ba-4eb7-91bb-49fb66edeffb/images/58a02945-aa23-4eb1-90cf-881be4c93c0c.sda1,sda1,w' ]
root = "/dev/sda1 ro"
extra = "5"

DomainUの起動
# xm create -c xmp2vvine40u
※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
Kudzu画面について
P2Vで作成された仮想Vine Linux 4をDomainUで実行して「Welcome to Kudzu」画面が表示が表示された場合はEnterキーを押し、
次の「Hardware Removed」(ネットワークカードの取り外し)画面でF3キー(Ignore/Keep All)を押します。
この操作によって次回からは本画面は表示されません。
物理Vine Linux 4でのハードウェア情報が/etc/modprobe.confや/etc/sysconfig/hwconfに残ったままとなりますが問題ありません。
ログインプロンプト
DomainUのブートプロセスのメッセージが流れてテキストログインプロンプトが表示されます。
テキストログインプロンプトはそのまま放置しておいて構いません。
VNCクライアントからの接続
VNCクライアントがインストールされていなければそれをインストールします。
# yum install vnc

次にVNCクライアントのvncviewerを起動します。
接続先に「vine40share:1」を指定して＜接続＞ボタンで接続します。
※vine40shareは仮想Vine Linux 4のホスト名です。
GDMログイン画面
VNC接続できるとGDMログイン画面が表示されますので通常通りログインします。
デスクトップ操作
VNCクライアントからDomainU側のGUI操作が行えます(日本語入力も行えます)。

１０．XenServerの通常のDomain0としての利用例

XenExpressのXenServerは管理コンソール経由での利用だけでなく単なるDomain0として直接利用することもできます。
ここではXenServerのDomainUとしてVine Linux 4を実行させる手順を紹介します。
※既存のVine Linux 4のHDDをXenExpressマシンにスレーブ接続して利用する方式です。

Vine Linux 4用DomainUへのGUIログイン環境の構築(VNCサーバと仮想フレームバッファの導入)
VNCクライアントから実ビデオカードを持たないDomainU(Vine Linux 4)にXDMCP接続してGUI操作できるように仮想フレームバッファを導入します。
その詳細手順は「仮想フレームバッファ(Vine Linux 4.0編)」を参照して下さい(手順変更は不要です)。
Vine Linux 4へのカーネルモジュールコピーとネットワーク設定の一部変更
まずDomainUとして実行させるVine Linux 4のHDDをXenServerマシンにスレーブ接続します。
次に以下のコマンドでVine Linux 4にDomainU用カーネルモジュールをコピーします。
更に、Vine Linux 4側の/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0の内容も一部変更します。
# mount /dev/hdb1 /mnt
# cp -Ra /lib/modules/2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen /mnt/lib/modules
# vi /mnt/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0
HWADDR行を削除します。
# umount /mnt

Vine Linux 4用ドメイン構成ファイルの作成
以下の内容をもつVine Linux 4(DomainU)用ドメイン構成ファイル(/etc/xen/xmvine40u)を用意します。

kernel = "/boot/vmlinuz-2.6.16.38-xs3.2.0.531.3960xen"
memory = 256
name = "Vine40U"
vif = [ 'mac=00:16:3e:00:00:11, bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'phy:hdb,hda,w' ]
root = "/dev/hda1 ro"
extra = "5"

DomainUの起動
# xm create -c xmvine40u
※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
Kudzu画面での操作
DomainUでは実際のネットワークカードが存在しないため実際のネットワークカードの設定をどうするかの問合せ画面が表示されます。
まず「Welcome to Kudzu」画面が表示されたらEnterキーを押し、次の「Hardware Removed」(ネットワークカードの取り外し)画面でF3キー(Ignore/Keep All)を押します。
この操作によって次回からは本画面は表示されません。
ログインプロンプト
DomainUのブートプロセスのメッセージが流れてテキストログインプロンプトが表示されます。
テキストログインプロンプトはそのまま放置しておいて構いません。
VNCクライアントからの接続
VNCクライアントがインストールされていなければそれをインストールします。
# yum install vnc

次にVNCクライアントのvncviewerを起動します。
接続先に「vine40share:1」を指定して＜接続＞ボタンで接続します。
※vine40shareはVine Linux 4のホスト名です。
GDMログイン画面
VNC接続できるとGDMログイン画面が表示されますので通常通りログインします。
デスクトップ操作
VNCクライアントからDomainU側のGUI操作が行えます(日本語入力も行えます)。

１１．XenServerでの通常カーネルの利用

通常カーネルのインストールについて
「X Window System」をインストールする際に通常カーネル(kernel-2.6.9-55.EL)も同時にインストールされます。

GRUBメニューへのエントリ追加
/boot/grub/menu.lstに下記エントリを追加します。

title CentOS-4 (Normal kernel)
   root (hd0,0)
   kernel /boot/vmlinuz-2.6.9-55.EL ro root=LABEL=/-main rhgb quiet
   initrd /boot/initrd-2.6.9-55.EL.img

通常カーネルのブート
GRUBメニューで「CentOS-4 (Normal kernel)」を選択してブートするとCentOS 4.4と同じスタイルでブートされます。
尚、通常カーネルでブートしてもeth0,loの他にxenbr0もアクティブになります。
更にeth0にはIPアドレスは割当てられずにxenbr0側にIPアドレスが割当てられますが通常通りネットワークは使用可能となります。
これは/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0の中に「BRIDGE=xenbr0」指定があるためです。
動作確認