オープンギャラリー：KVMとHVMでの仮想ディスク共用

KVMとHVMでの仮想ディスク共用

2007年5月31日、従来のFedora CoreとFedora Extraのリポジトリが統合されたFedora 7が正式リリースされました(正式バージョン名は7.0.1)。
Fedora 7はXen 3.1.0(正確にはxen-3.1.0-0.rc7.1.fc7というリリース候補版)を搭載していますが標準でKVMもサポートしています。
KVMはイスラエルの仮想化ソフトウェアベンダ(Qumranet)がQEMUベースに開発したカーネルベースの仮想マシン機能です。
※Fedora 7にはqemu-0.9.0-2.fc7というqemuパッケージ自体も入っていますがKVMはkvm-24-1パッケージとして付属しています。
従来からあるXenのHVMドメインに対してKVMで実行させる仮想マシン環境をKVMドメインと呼ぶことがあります。

Fedora 7の仮想マシンマネージャは従来のXenに加えて今回KVMもサポートしました。
即ち、仮想マシンマネージャでKVMドメインで動作するOSをインストールしたり実行させたりできるようになりました。
尚、KVMドメインは/dev/kvmを必要とし、Xenカーネルではなく通常カーネルの環境で動作します。

ここではKVMとXen(HVM)での仮想ディスクを共用する手順を紹介します。

今回使用したPCのハードウェア構成は以下の通りです。
・CPU：Core 2 Duo E6600
・チップセット：Intel P965
・メモリ：3GB
・VGAカード：nVIDIA GeForce 7600 GT(VRAM 256MB)

１．KVMドメインでのCentOS 5のインストール

仮想マシンマネージャというGUIツールを利用してKVMドメインでのCentOS 5をインストールします。

仮想マシンマネージャの起動
GNOMEの[アプリケーション]－[システムツール]－[Virtual Machine Manager]で仮想マシンマネージャを起動します。
ローカルQEMUホストへの接続
「接続を開く」画面のハイパーバイザーとしてQEMUを選択して＜接続＞ボタンでローカルQEMUホストに接続します。
仮想システムの作成開始
仮想マシンマネージャの＜新規＞ボタンを押して「新しい仮想システムの作成」ウィザードを起動します。
仮想システムの定義
今回は以下の仮想システム定義としました。
(1)仮想システム名：kvmcentos5 ※ここで指定した名称はKVMドメイン名となります。
※また/etc/libvirt/qemu/kvmcentos5.xmlというXML形式のKVM構成ファイルが作成されます。
(2)仮想化の方法：完全仮想化しか選択できません。
(3)インストールメディア：インストールDVDをセットして＜CD-ROMまたはDVD＞のオプションを選択します。
※インストールメディアへのパス「CentOS_5.0_Final」は自動表示されます。

(4)OSタイプ：Linux
(5)OS種別：Cent OS 5
(6)ストレージ領域のタイプ：シンプルファイル
(7)ストレージファイル：/root/kvmcentos5.img
(8)ストレージファイルサイズ：8000MB
※＜今、仮想ディスク全体を割り当てる＞：off
(9)メモリとCPUの割り当て
VMの最大メモリ(MB)：500
VMk起動メモリ(MB)：500
VCPU：1
インストール準備完了画面で＜完了＞ボタンを押すと仮想マシン環境が作成されます。

自動生成されたKVMドメイン構成ファイルの内容
自動生成されたKVMドメイン構成ファイル(/etc/libvirt/qemu/kvmcentos5.xml)の内容は以下のようになっています。

<domain type='kvm'>
  <name>kvmcentos5</name>
  <uuid>e6dd54bc-ba6b-fb87-de0d-2eee44c4e523</uuid>
  <memory>512000</memory>
  <currentMemory>512000</currentMemory>
  <vcpu>1</vcpu>
  <os>
    <type>hvm</type>
    <boot dev='hd'/>
  </os>
  <features>
    <acpi/>
  </features>
  <on_poweroff>destroy</on_poweroff>
  <on_reboot>restart</on_reboot>
  <on_crash>destroy</on_crash>
  <devices>
    <emulator>/usr/bin/qemu-kvm</emulator>
    <disk type='file' device='disk'>
      <source file='/root/kvmcentos5.img'/>
      <target dev='hda'/>
    </disk>
    <interface type='network'>
      <mac address='00:16:3e:77:ee:b3'/>
      <source network='default'/>
    </interface>
    <graphics type='vnc' port='-1'/>
  </devices>
</domain>

仮想マシンコンソール操作
仮想マシンコンソールで実際のCentOS 5をインストールします。
仮想マシンコンソールでの操作の流れは以下のようになります。

language選択
ここではJapanese(日本語)を選択します。
キーボード選択
日本語を選択します。
パーティション設定
カスタムレイアウトを指定してみました。
ネットワーク定義
ここではKVMドメインでのTAPを前提にしたネットワーク定義を行います。
通常はDHCP指定で構いません。
もし固定IPアドレスを指定する場合は/etc/libvirt/qemu/networks/default.xmlに記載されているIPアドレス体系に従います。
※例：192.168.122.xxx等
ホスト名はkvmcentos5としました。
ソフトウェアセット
インストールするソフトウェアセットはデフォルトのGNOMEデスクトップとしました(Apacheもインストールされます)。

インストール完了後の再起動
インストールが完了してもCentOS 5は自動再起動はされません。
実はCentOS 5インストール時には以下のコマンド(-no-rebootを含む)が自動起動されておりゲストOSの再起動はされません。
※実際には1行指定のコマンドです。

/usr/bin/qemu-kvm -M pc -m 500 -smp 1 -monitor pty 
-no-reboot 
-boot d -hda /root/kvmcentos5.img -cdrom /dev/scd0 
-net nic,macaddr=00:16:3e:77:ee:b3,vlan=0 
-net tap,fd=10,script=,vlan=0 
-vnc :0

KVMドメインの再起動は以下の手順で行います。
(1)仮想マシンマネージャの「kvmcentos5」を選択して＜開く＞ボタンをクリックして仮想マシンコンソールを表示させます。
(2)仮想マシンマネージャの「kvmcentos5」を右クリックして＜Run＞メニューを選択するとそのKVMドメインが起動されます。
※KVMドメインが起動されると仮想マシンコンソールに「ようこそ」画面(インストールの最終ステップ)が表示されます。

ここでのステップ終了後の再起動も仮想マシンマネージャから行います。

KVMドメインでのCentOS 5のGUI操作
まず仮想マシンマネージャからKVMドメイン(CentOS 5)を起動します。

KVMドメインでのCentOS 5のGUIログイン画面(GDM)が表示されたらログインします。
ログイン後はデスクトップでのGUI操作が可能です。
※CentOS 5の画面解像度を変更すると仮想マシンコンソールのサイズも自動変更されます。

GUI操作できることが確認できたらCentOS 5を一旦shutdownします。

２．HVMドメインでのCentOS 5のインストール

Fedora 7をXenモードで起動し、仮想マシンマネージャというGUIツールを利用してHVMドメインでのCentOS 5をインストールします。

KVMドメイン用仮想ディスクの退避
KVMドメイン用仮想ディスクと同じファイル名のHVMドメイン用仮想ディスクを作成するためKVMドメイン用仮想ディスクを一旦退避しておきます。
# mv kvmcentos5.img kvmcentos5.img.org
仮想マシンマネージャの起動
GNOMEの[アプリケーション]－[システムツール]－[Virtual Machine Manager]で仮想マシンマネージャを起動します。
ローカルXenホストへの接続
「接続を開く」画面のハイパーバイザーとしてXenを選択して＜接続＞ボタンでローカルXenホストに接続します。
仮想システムの作成開始
仮想マシンマネージャの＜新規＞ボタンを押して「新しい仮想システムの作成」ウィザードを起動します。
仮想システムの定義
今回は以下の仮想システム定義としました。
(1)仮想システム名：hvmcentos5 ※ここで指定した名称はHVMドメイン名となります。
(2)仮想化の方法：準仮想化がデフォルトですがここでは完全仮想化を選択します。
(3)インストールメディア：インストールDVDをセットして＜CD-ROMまたはDVD＞のオプションを選択します。
※インストールメディアへのパス「CentOS_5.0_Final」は自動表示されます。

(4)OSタイプ：Linux
(5)OS種別：Cent OS 5
(6)ストレージ領域のタイプ：シンプルファイル
(7)ストレージファイル：/root/kvmcentos5.img ※KVMドメイン用仮想ディスクファイル名と同じ名称にします。
(8)ストレージファイルサイズ：8000MB
※＜今、仮想ディスク全体を割り当てる＞：off
(9)ネットワークの種別：仮想ネットワークのdefault選択(Bridge接続ではなくTAP接続となります)。
※KVMドメイン用仮想ディスクとの共用を図るためBridge接続用の＜共有物理デバイス＞オプションは選択しません。
(10)メモリとCPUの割り当て
VMの最大メモリ(MB)：500
VMk起動メモリ(MB)：500
VCPU：1
インストール準備完了画面で＜完了＞ボタンを押すと仮想マシン環境が作成されます。
仮想マシンコンソール操作
仮想マシンコンソールで実際のCentOS 5をインストールします。
仮想マシンコンソールでの操作の流れはKVMドメインでのCentOS 5のインストールと同じですので手順紹介は省略します。
KVMドメイン用仮想ディスクの戻し
HVMドメイン用仮想ディスクは削除しKVMドメイン用仮想ディスクをHVMドメイン用仮想ディスクとして利用できるようにします。
# rm kvmcentos5.img
# mv kvmcentos5.img.org kvmcentos5.img

３．HVMドメインでのKVMドメイン用仮想ディスクの利用

まず仮想マシンマネージャからHVMドメイン(CentOS 5)を起動します。

HVMドメインでのCentOS 5のGUIログイン画面(GDM)が表示されたらログインします。
ログイン後はデスクトップでのGUI操作が可能です。

これでKVMとXenでの仮想ディスク共用が確認できました。

尚、HVMドメインでのCentOS 5起動は以下のコマンドが内部的に使用されています。
※実際には1行指定のコマンドです。

/usr/lib/xen/bin/qemu-dm -d 4 -vcpus 1 
-boot c -serial pty -acpi -domain-name hvmcentos5 
-net nic,vlan=1,macaddr=00:16:3e:6f:9b:6d,model=rtl8139 
-net tap,vlan=1,bridge=virbr0 
-vncunused -vnclisten 127.0.0.1

４．KVMとHVMでのWindows Vista仮想ディスク共用

Windows Vista 32bit版ではKVM,HVMドメイン共に「Realtek RTL8139C+」のエミュレーション機能が使用できないためCentOS 5の場合と手順が異なります。

Windows Vista仮想ディスクの作成パターン
- 仮想マシンマネージャによるKVMドメイン用仮想ディスクの作成
  この場合、仮想マシンマネージャからKVMドメインを起動すると「Realtek RTL8139C+」がエミュレートされてネットワークは使用不可となります。
- qemu-kvmコマンドを手動起動してのKVMドメイン用仮想ディスクの作成
  qemu-kvmコマンドで「AMD PCNET」をエミュレートするように指定すればネットワークが使用可能となります(Windows Vistaに付属していないドライバを使用)。
- 仮想マシンマネージャによるHVMドメイン用仮想ディスクの作成
  この場合も、仮想マシンマネージャからHVMドメインを起動すると「Realtek RTL8139C+」がエミュレートされてネットワークは使用不可となります。
- xm createコマンドを手動起動してのHVMドメイン用仮想ディスクの作成
  HVMドメイン構成ファイルで「AMD PCNET」をエミュレートするように指定すればネットワークが使用可能となります(Windows Vistaに付属していないドライバを使用)。
上記のいずれの方法でWindows Vista仮想ディスクを作成してもqemu-kvmコマンド, xm createコマンドを手動利用することでKVMとHVM共にネットワークが利用できるようになります。
但し、KVMではuserモードを使用しHVMではBridgeモードを使用する形態となります。
今回のWindows Vista仮想ディスク共用方式
今回は仮想マシンマネージャを使用してKVMドメイン用仮想ディスクを作成することにします。
KVMドメインのWindows Vistaの起動はqemu-kvmコマンドを使用して「AMD PCNET」をエミュレートさせることにします(ネットワークはuserモード)。
HVMドメインのWindows Vistaの起動はxm createコマンドを使用して「AMD PCNET」をエミュレートさせることにします(ネットワークはBridgeモード)。
仮想マシンマネージャによるKVMドメイン用Windows Vista仮想ディスクの作成
この手順は仮想マシンマネージャによるKVMドメイン用CentOS 5仮想ディスクの作成の場合と同様ですので手順詳細は割愛します。
尚、仮想ディスクのファイルは/root/kvmvista.imgとし、ファイルサイズは40000MBとしました。
※＜今、仮想ディスク全体を割り当てる＞というオプションはoffにしておきます。

Windows Vistaインストール中に「Realtek RTL8139C+ Fast Ethernet NIC」カードを検出して
「コンピュータがネットワークに接続されていることが検出されました」と表示されますがそのカードでのネットワーク利用はできません。
「AMD PCNET」用ドライバの準備
Windows Vista自身はAMD PCNET用ドライバを標準装備していません。
そこでAMD PCNET用ドライバとしてはhttp://www.amd.com/us-en/assets/content_type/utilities/V4.51.zipのファイルを使用します(61KB)。
V4.51.zipをネットワークの利用できないゲストOSに転送する方法で最も簡単なのはFDD経由です。
FDに収まらないファイルであれば一旦Fedora 7でmkisofsコマンドでデータCDイメージ化してそれを仮想マシンのCDドライブ指定すれば使用できます。
[ドライバファイルのデータCDイメージ化例]
# mkdir ndis5
# unzip V4.51.zip -d ndis5
# mkisofs -o ndis5win.iso -R -J ndis5

今回のV4.51.zipファイルサイズは小さいですが上記手順でデータCDイメージ化しました。
AMD PCnetエミュレート指定でのKVMドメイン起動
Windows VistaのKVMドメインをAMD PCNETのエミュレートオプション付きで起動するには以下のコマンドを実行します。
# qemu-kvm -m 512 -smp 1 -hda /root/kvmvista.img -cdrom /root/ndis5win.iso -net nic,model=pcnet -net user -k ja -localtime
Windows VistaでのAMD PCNET用ドライバのインストール
まずデバイスマネージャのイーサネットコントロールの右クリックメニューの＜ドライバソフトウェアの更新＞を選択します。
次にドライバを検索する場所(今回はD:\)を指定すればドライバがインストールされます。
TCP/IPの設定をDHCPとすると通常は以下のネットワーク構成となります。
(1)IPアドレス：10.0.2.15
(2)ゲートウェイアドレス：10.0.2.2
(3)DNSサーバアドレス：10.0.2.2

これでKVMドメインでのWindows Vistaでネットワークが利用できるようになります。

AMD PCNETエミュレート指定でのHVMドメイン起動

Fedora 7のXenモード起動

Windows Vista用HVMドメイン構成ファイルの作成
# cp /etc/xen/xmexample.hvm /etc/xen/xmvista.hvm
# cd /etc/xen
# vi /etc/xen/xmvista.hvmで以下のように内容変更します。

(1)memory = 128を1024に変更。
(2)name = "ExampleHVMDomain"を"VistaxHVM"に変更。
(3)vif = [ 'type=ioemu, bridge=xenbr0' ]をvif = [ 'type=ioemu, bridge=xenbr0, model=pcnet' ]に変更。
(4)disk = [ 'file:/var/images/min-el3-i386.img,hda,w', ',hdc:cdrom,r' ]を
disk = [ 'file:/root/kvmvista.iso,hda,w', 'file:/root/ndis5win.iso,hdc:cdrom,r' ]に変更。
※上記diskでcdromを定義しています。
(5)#boot="cda"はそのままにしておきます。
(6)sdl=0はそのままにしておきます。
(7)vnc=1もそのままにしておきます。
※これはxm createでHVMドメイン起動後に仮想マシンマネージャからWindows VistaのGUI画面を表示させるための設定です。
(8)#localtime=1の#を削除。
(9)#keymap='ja'の#を削除。

HVMドメインの起動
# xm create xmvista.hvm
このコマンドを実行してもWindows Vistaの画面は表示されません。
Windows Vistaの画面表示は仮想マシンマネージャでVistaxHVMを開くことで行えます。
ネットワーク利用(Webアクセス例)
Windows VistaのHVMドメインでAMD PCnetエミュレーションを利用することでネットワークが使えるようになりました。