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Xen 3.0.3(Debian GNU/Linux 4.0編)

2007年4月8日にDebian GNU/Linux 4.0(Etch)がリリースされました。
Debian GNU/Linux 4.0(以下、Debian 4.0)に含まれるXenのバージョンは3.0.3です。
Debian 4.0の標準インストールではXenはインストールされませんが、apt-getで簡単に追加インストールできます。

ここではDebian 4.0へのXen環境の導入とそのDomainUでのVine Linux 4.0及びDebian 4.0の実行手順を紹介します。
更にHVMドメインでのWindows XPインストール手順についても紹介します。

１．前提条件

前提条件は以下の通りです。

ホストCPU：Core 2 Duo E6600
ホスト実メモリ：3GB
ホストOS：Debian 4.0(32ビット版)
ホストOSのインストールメディア：インストールDVD使用(初期Xenパッケージの動作確認のためDVD使用)
※インストール後は「apt-cdrom add」ですべてのDVDを登録。
DomainU用Vine Linux 4.0(Xen環境への移行前)
- 用途：デスクトップ利用
- パーティション構成
  /dev/hda1：/パーティション
  /dev/hda2：swapパーティション
DomainU用Debian 4.0(Xen環境への移行前)
- 用途：デスクトップ利用
- パーティション構成
  /dev/hda1：/パーティション
  ※swapパーティション無し。
Xen利用環境
- ハイパバイザーカーネル：xen-3.0.3-1-i386-pae.gz
- Domain0カーネル：vmlinuz-2.6.18-4-xen-686
- DomainUカーネル：vmlinuz-2.6.18-4-xen-686(Domain0用カーネルと同じ)
- DomainU用HDD：ホストOSのHDDにスレーブ接続して利用
- DomainUへの接続：VNC経由のXDMCP接続にてgdmログインしてGUI操作します。

２．ホストDebian 4.0へのXen 3.0.3の導入

Xen関連パッケージの導入
apt-getコマンドでXen関連パッケージをインストールします。

# apt-get install xen-tools
# apt-get install bridge-utils
# apt-get install sysfsutils
# apt-get install linux-image-2.6-xen-686
※linux-image-2.6.18-4-xen-686とlinux-modules-2.6.18-4-xen-686も自動インストールされます。
# apt-get install xen-utils-common
# apt-get install xen-utils-3.0.3-1
# apt-get install xen-hypervisor-3.0.3-1-i386-pae
# apt-get install libc6-xen
※libc6-xenのインストール時、libc6-i686は自動削除されます。
# apt-get install xen-ioemu-3.0.3-1 ※これはHVMドメイン(完全仮想化)専用パッケージです。

更にDomainUやHVMドメインをVNCで画面表示するためにVNCパッケージもインストールしておきます。
# apt-get install vncserver
# apt-get install xtightvncviewer

GRUBメニューのカスタマイズ
xen-hypervisor-3.0.3-1-i386-paeをインストールした時点で/boot/grub/menu.lstにXenエントリが自動追加されます。
しかしXenエントリのkernel行にはdom0_memの値は設定されませんのでホストのメモリ環境に応じて値を設定します(今回はdom0_mem=512mを指定)。

title		Xen 3.0.3-1-i386-pae / Debian GNU/Linux, kernel 2.6.18-4-xen-686
root		(hd0,0)
kernel		/boot/xen-3.0.3-1-i386-pae.gz dom0_mem=512m
module		/boot/vmlinuz-2.6.18-4-xen-686 root=/dev/hda1 ro console=tty0
module		/boot/initrd.img-2.6.18-4-xen-686
savedefault

Xenデーモン構成ファイルの変更
Xenデーモン構成ファイル(/etc/xen/xend-config.sxp)はカスタマイズ可能項目が多いですが最低限以下の変更を行います。
# vi /etc/xen/xend-config.sxp
(1)「# (network-script network-bridge)」を「(network-script network-bridge)」に変更します(Domain0とDomainUのネットワーク共有用)。
(2)「(network-script network-dummy)」を「# (network-script network-dummy)」に変更します。
(3)「#(vnc-listen '127.0.0.1')」を「(vnc-listen '127.0.0.1')」に変更します(HVMでVNCを利用するためのデフォルト設定)。
※ (vncpasswd '...')指定はしません。
reboot
再起動時、GRUBメニューで「Xen 3.0.3-1-i386-pae」エントリを選択してブートします。
ブート後、psコマンドで以下のデーモンが起動されていることを確認します。
(1)[xenwatch]
(2)[xenbus]
(3)xenstored
(4)xend
(5)xenconsoled

尚、Xen起動後にXenデーモン構成ファイル(/etc/xen/xend-config.sxp)を変更した場合は以下のコマンドで有効化します。
# /etc/init.d/xend restart

３．Vine Linux 4.0のDomainU実行手順

Vine Linux 4.0への仮想フレームバッファ/vncserverの導入とXDMCP接続設定
DomainUでVine Linux 4.0を稼動させてGUI操作するにはVine Linux 4.0への仮想フレームバッファ/vncserverの導入とXDMCP接続設定が必要となります。
具体的手順は仮想フレームバッファ(Vine Linux 4.0編)を参照して下さい。
Vine Linux 4.0ディスクのスレーブ接続
Vine Linux 4.0ディスクをホストOSのディスクにスレーブ接続します。
Vine Linux 4.0ディスクの内容更新
Vine Linux 4.0ディスクがXen環境で動作するように内容更新します。
具体的にはXen用カーネルモジュールのコピーとネットワーク設定ファイルの更新を行います。
# mount /dev/hdb1 /mnt
# cp -Ra /lib/modules/2.6.18-4-xen-686 /mnt/lib/modules
# vi /mnt/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0
HWADDR行を削除します。
# umount /mnt

ドメイン構成ファイルの作成
DomainU上でVine Linux 4.0を実行させるためのドメイン構成ファイル(仮想マシン環境設定ファイル)を作成します。
そのファイルは/etc/xen/xmvine40uとします(ホストOS側に用意します)。
xmvine40uの内容は以下の通りです。

kernel = "/boot/vmlinuz-2.6.18-4-xen-686"
ramdisk = "/boot/initrd.img-2.6.18-4-xen-686"
memory = 256
name = "Vine40U"
vif = [ 'mac=00:16:3e:00:00:11, bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'phy:hdb,hda,w' ]
root = "/dev/hda1 ro"
extra = "5"

Vine Linux 4.0(DomainU)の実行
- DomainUの起動
  # xm create -c xmvine40u
  ※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
  
  DomainUを起動するとブートメッセージが表示されます。
- Kudzu画面での操作
  DomainUでは実際のネットワークカードが存在しないため実際のネットワークカードの設定をどうするかの問合せ画面が表示されます。
  まず「Welcome to Kudzu」画面が表示されたらEnterキーを押し、次の「Hardware Removed」(ネットワークカードの取り外し)画面でF3キー(Ignore/Keep All)を押します。
  この操作によって次回からは本画面は表示されません。
- ログインプロンプト
  DomainUのブートプロセスのメッセージが流れてテキストログインプロンプトが表示されます。
  
  通常通りログインするかプロンプトのままにしておきます。
  ※ログインプロンプトのまま放置しておいてもVNC接続やXDMCP接続は使用できます。
- Domain0からのVNC接続
  VNCクライアントのvncviewerを起動します。
  接続先に「vine40share:1」を指定して＜OK＞ボタンで接続します。
  ※vine40shareはVine Linux 4.0のホスト名です。
- GDMログイン画面
  VNC接続できるとGDMログイン画面が表示されます。
  
  通常通りログインします。
- デスクトップ操作
  VNCクライアントからDomainU側のGUI操作が行えます。

４．Debian 4.0のDomainU実行手順

Debian 4.0への仮想フレームバッファ/vncserverの導入とXDMCP接続設定
DomainUでDebian 4.0を稼動させてGUI操作するにはDebian 4.0への仮想フレームバッファ/vncserverの導入とXDMCP接続設定が必要となります。
具体的手順は仮想フレームバッファ(Debian GNU/Linux 4.0編)を参照して下さい。
DomainUで実行させるDebian 4.0へのlibc6-xenのインストール
DomainUで実行させるDebian 4.0へのlibc6-xenのインストールはDebian 4.0固有の「4gb seg fixup」問題の解消のために行います。
※DomainU側のDebian 4.0にlibc6-xenが導入されていない場合、そのDomainUをブートすると以下のメッセージが多発してDomainUを利用できません。
4gb seg fixup, process sh (pid xxx), cs:ip 73:yyyyyyyy

libc6-xenのインストールとlibc6-xen.confファイルの作成は以下の手順で行います。
# apt-get install libc6-xen
※libc6-xenのインストール時、libc6-i686は自動削除されます。
# echo 'hwcap 0 nosegneg' > /etc/ld.so.conf.d/libc6-xen.conf && ldconfig
Debian 4.0ディスクのスレーブ接続
Debian 4.0ディスクをホストOSのディスクにスレーブ接続します。
Debian 4.0ディスクの内容更新
Debian 4.0ディスクがXen環境で動作するように内容更新します。
具体的にはXen用カーネルモジュールのコピーを行います。
※DomainUとして実行させるDebian 4.0側の/etc/network/interfacesでは「auto eth0」「iface eth0 inet static」の指定があるものとします。
# mount /dev/hdb1 /mnt
# cp -Ra /lib/modules/2.6.18-4-xen-686 /mnt/lib/modules
# umount /mnt

ドメイン構成ファイルの作成
DomainU上でDebian 4.0を実行させるためのドメイン構成ファイル(仮想マシン環境設定ファイル)を作成します。
そのファイルは/etc/xen/xmdeb40uとします(ホストOS側に用意します)。
xmdeb40uの内容は以下の通りです。
※DomainUのDebianではmacアドレスは固定にします(macアドレスを変更する毎にeth1,eth2,...と変化します)。

kernel = "/boot/vmlinuz-2.6.18-4-xen-686"
ramdisk = "/boot/initrd.img-2.6.18-4-xen-686"
memory = 256
name = "Debian40U"
vif = [ 'mac=00:16:3e:00:00:11, bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'phy:hdb,hda,w' ]
root = "/dev/hda1 ro"
extra = "2"

Debian 4.0(DomainU)の実行
- DomainUの起動
  # xm create -c xmdeb40u
  ※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
  
  DomainUを起動するとブートメッセージが表示されます。
- ログインプロンプト
  DomainUのブートプロセスのメッセージが流れてテキストログインプロンプトが表示されます。
  
  通常通りログインするかプロンプトのままにしておきます。
  ※ログインプロンプトのまま放置しておいてもVNC接続やXDMCP接続は使用できます。
- Domain0からのVNC接続
  VNCクライアントのvncviewerを起動します。
  接続先に「deb40share:1」を指定して＜OK＞ボタンで接続します。
  ※deb40shareはDomainUのDebian 4.0のホスト名です。
- GDMログイン画面
  VNC接続できるとGDMログイン画面が表示されます。
  
  通常通りログインします。
- デスクトップ操作
  VNCクライアントからDomainU側のGUI操作が行えます。

５．Windows XP(SP2版)のインストール

HVMドメインでのWindows XP(SP2版)のインストール手順は以下の通りです。

20GBディスクイメージの作成
# dd if=/dev/zero of=/boot/xenwinxp.img bs=1M count=1 seek=20480

HVMドメイン設定ファイル(/etc/xen/xmwinxp.hvm)の作成
Debian 4.0のXenにはHVMドメイン用のサンプル構成ファイルが付属していないようです。
そこで以下の内容をもつHVMドメイン設定ファイルを新規に作成します。

kernel = "/usr/lib/xen-3.0.3-1/boot/hvmloader"
builder='hvm'
memory = 512
name = 'WinXPHVM'
vif = [ 'type=ioemu,bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'file:/boot/xenwinxp.img,hda,w', 'file:/boot/winxpcd.img,hdc:cdrom,r' ]
device_model = '/usr/lib/xen-3.0.3-1/bin/qemu-dm'
vnc = 1
soundhw='es1370' ※サウンドは再生されません。
localtime=1

[補足]
(1)実CD-ROMをインストールメディアとして直接利用する場合の設定について；
上記ではハードウェア構成の影響を受けないようにするためにインストールメディアはCDイメージとしました。
もし、CD-ROMドライブが2台あって/dev/cdromが/dev/hdeへのシンボリックリンクで/dev/cdrom1が/dev/hdfへのシンボリックリンクになっている場合は、
diskの「'file:/boot/winxpcd.img,hdc:cdrom,r'」部分を「'phy:/dev/hdf,hdc:cdrom,r'」にして/dev/cdrom1側に実CD-ROMをセットすれば利用できます。
(2)keymap='ja'指定は有効になりません(Xenの日本語キーボードサポートパッチが欲しいところです)。

HVMドメインの起動
# xm create xmwinxp.hvm boot=d
※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
VNCクライアントの起動
「xm create xmwinxp.hvm boot=d」でHVMドメインを起動してもHVMドメインの画面(Windows XPインストール画面)は表示されません。
そこで以下のコマンドでVNCクライアントを起動してHVMドメイン画面を表示します。
# vncviewer localhost ※パスワードは求められません。

尚、Windows XPのインストーラが自動リブートするとVNCクライアントは終了してしまいます。
その場合は再度「vncviewer localhost」でHVMドメイン画面を表示させる必要があります。
Windows XPインストール画面

プロセス確認
Windows XPのインストールプロセスのコマンドは次のようになっていました(実際には1行コマンドです)。

/usr/lib/xen-3.0.3-1/bin/qemu-dm -d 11 -m 512 -boot d -soundhw es1370 -localtime -vcpus 1
 -domain-name WinXPHVM
 -net nic,vlan=1,macaddr=00:16:3e:5a:ba:36,model=rtl8139 -net tap,vlan=1,bridge=xenbr0
 -vncunused -k en-us -vnclisten 127.0.0.1

インストール後のWindpws XP実行
このHVMドメインのWindows XPではネットワークも問題なく利用できます。
補足
仮想化ソフトという目で見た場合、Debian 4.0には無償のVMware Serverも手軽に導入できます。
そのVMware環境に新OSや64ビット版ゲストOSをインストールして実行するのもXenの場合よりは簡単です。
しかし現状OpenSolarisやNetBSD用のVMwareは存在しないためXenの方が適用範囲は広いと言えます。
- Windows Vista(VMware Toolsでネットワーク利用も可能)
- Windows XP (x64版)(VMware Toolsなしでもネットワーク利用は可能)
- Debian GNU/Linux 4.0 (amd64版)(VMware Toolsなしでもネットワーク利用は可能)